劇場公開日 1998年5月2日

「ジュード・ロウのキラキラ感」ガタカ ハルクマールさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ジュード・ロウのキラキラ感

2024年3月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

難しい

まぶしいです。

遺伝子の優劣で人生のすべてが決まってしまう近未来、宇宙飛行士を夢見るヴィンセントは生まれてすぐに行われる遺伝子の検査で心臓の疾患があり、寿命も平均30年程度と診断されてしまった。一方の弟アントンは遺伝子操作の上に生まれた”適正者”。不適正者と診断されているヴィンセントは生まれながらに身体だけでなく就職先を限定されてしまうなど、様々なハンディを背負ってしまう。

それでも宇宙飛行士になりたいヴィンセントは、宇宙船の操業会社であるガタカに掃除夫として就職する。日々宇宙船の発射を目の当たりにするも、不適正者のヴィンセントには万に一つのチャンスも与えられることは無い。

そこで、ヴィンセントは大きな賭けに出る。適正者の中でも優秀な遺伝子を持つ人間に成りすますため、DNAブローカーに接触する。ブローカーの仲介で、元水泳選手でありながら交通事故で下半身不随となったジェロームに出会う。ヴィンセントはジェロームに成りすまし、ガタカに宇宙飛行士候補として採用される。
なんとか宇宙飛行士の選考に残ったジェロームことヴィンセントだったが、会社内で起こった殺人事件を発端に、自らの素性が暴かれる危機に直面する。

DNAによって全て支配される世界というコンセプト自体は考えられなくもないけど、それをここまで徹底的に、或いは妄信的に人の層別に使ってしまう世界観が斬新かつ現代社会の風刺にもなっている気がする。学歴だったり運動能力だったり、これらは自分の努力でどうにかならないわけでもないが、如何ともしがたい部分だってある。でも、それで人を層別するのってフェアなのかな、というよくある疑問。

主人公のヴィンセントメチャクチャ努力している。でも、君の遺伝子イマイチです、はい、不合格。とやられてしまう。これに果敢に挑戦したヴィンセントくんのお話。

だけど、結構引っかかる部分があるのよね。彼を取り巻く人たちだってみんな真摯に生きている。もちろん不正もせずに。
もっと言えばジェロームの人生って何なんだろう。彼の献身をヴィンセントはどう思っているのだろうか。本当にwin-winなんだろうか。
色々と考えてしまった。そう、この映画は誰かと一緒に観て、僕ならどう思う、私ならこう言う選択をするって熱く話し合うのにいい作品だと思う。

にしても、今やイケオジやらイケてないオジジやら色々やってるイーサン・ホークの若々しさ、そして何よりジュード・ロウのその愁いを帯びた輝きがこの映画のハイライト。
二人の若きイケメン、それと作中で脱ぐのかい、脱がんのかい、結局脱がんのかーい!となったユマ・サーマンもまた愁いを帯びた輝き。

観た後の印象はスッキリ感とは程遠い、だけど決してつまらんわけでも無いしムカつくわけでもない、ああ、そうなったのね、と静かに受け止める作品だと思った。

ハルクマール