劇場公開日 2024年8月2日

「こんなアニメ映画があったんだな。」風が吹くとき kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0こんなアニメ映画があったんだな。

2019年6月16日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 2011.3.11。東日本大震災を経験した日本人にとっては、また違った思いで鑑賞せざるをえない。

 時代は1980年代なので、米ソ核戦争を想定したものであり、チェルノブイリ以前だということを頭に入れておく。ほとんどが夫婦の会話のみ。それも多少ボケてはいるが、ほぼ知識の少ない一般人レベルなので、感情移入しやすい。第2次世界大戦を経験して、「あのときの戦争はよかったわ」などとたわけた発言もある(笑)。だから、どうしても過去の戦争しか比較の対象になっていない会話。夫の方は広島原爆についても知識があり、うんちくを並べ立てるが、科学の進歩により核兵器は格段の差があるだろうと予想はできた。しかし、政府発行のパンフレットに頼り切り、窓に白ペンキを塗ったり、ドアを60度に立てかけ、それが核シェルターになるのだと真剣に取り組んでみるのだ。

 あっという間に核戦争。一つの原爆が落ち、夫婦の住む家はボロボロに・・・それでも二人はなんとか生きていたが、用意した水を入れた瓶はこなごな。食料だってまともに食えたのは缶詰のみ。やがて、原爆症の症状が彼らを蝕んでいくのだった・・・髪が抜け落ち(チャーリー・ブラウン似の夫はもともと毛がない)、赤い斑点が現れ、二人とも衰弱の一途を辿る。最後にはなぜか紙袋を被る二人・・・

 核に対する無知。無知の美学。世界の終焉とあらば、そのほうが幸せなのかもしれない。アニメで描かれているのはそんな内容だけど、反核ではあるが反戦ではない。しかし、ハリウッドの映画人にはなかなか作れない内容なのは確か。同じ核保有国でありながら、感覚が違うんだろうな。

kossy