劇場公開日 2005年4月23日

「イラク自衛隊派遣の目的・・・それは飯を食って、記念撮影することだった!」Little Birds イラク戦火の家族たち kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0イラク自衛隊派遣の目的・・・それは飯を食って、記念撮影することだった!

2021年8月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

(綿井監督トークショー付きにて鑑賞)
 「ニュース・ステーション」や「NEWS23」などのイラク報道でお馴染みのフリージャーナリスト綿井健陽氏が自ら撮った123時間に及ぶ映像を再編集し、TV未公開部分をも含めて102分の映画を作った。戦争ドキュメンタリー映画は何本も観てきましたが、これほどまで市民に密着し、心を通わせたものは少ないでしょう。しかも被害に遭ってるのは民間人ばかり。戦争の一番の犠牲者は弱い一般市民であることが痛いほど伝わってきました。

 心に響くイラク人の言葉、「日本人はなぜこの戦争を支持してきたんだ?」。日本がイラク戦争を支持したという事実はイラク全土に知れ渡っている。綿井氏はもっとも痛い部分を突かれ弁明するが、その言葉は字幕にも書かれなかったようだ。日本人というだけで、地元の人たちに嫌われはじめると取材も苦労が絶えなかったと思います。そんな中での取材の敢行。病院内の映像では爆風で脚がちぎれたり、脳みそが飛び出した頭を押さえたり、内臓がはみ出したりと、直接的な映像こそなかったのですが、子を失った親の慟哭や悲痛な叫びが胸に響いてきました。

 不発弾を触って腕を失った子供。子供からすれば、平和な生活に突然やってきた戦争。大人の視点で見れば、イラン・イラク戦争、湾岸戦争と、戦争が永遠に続いて、家族を失う悲劇としか映らない。そして、「人間は戦争をするために生まれてきたのではない」という言葉が重くのしかかってきます。

 日本では衆議院総選挙の真っ只中。「フセインは大量破壊兵器を隠している」と主張し、米ブッシュ政権を支持し続けてきた政治家たちは、論点をすべて郵政民営化にすりかえて頑張ってるところなんですね。ブッシュ支持の政策を貫いたおかげで、元来親日派だったイラク人が日本人を敵視するようになったことなどは、多分、彼らにとってはどうでもいいことなのでしょう。

 綿井氏のトークショーでは貴重な意見も聞くことができました。イラクにおける医療などの重要な援助をもっとも頑張っているのは、軍隊ではなくNGOなのだと・・・そして軍隊を派遣している国のNGOはゲリラに狙われやすく、フランスのように派遣していない国ほど狙われずに活躍できるとのこと。自衛隊さえ派遣しなければ、若者が拘束されることもなかったろうに・・・

【2005年9月映画館にて】

kossy