劇場公開日 2004年8月7日

「確かに、エネルギーの塊のような絵に圧倒される一作」マインド・ゲーム yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0確かに、エネルギーの塊のような絵に圧倒される一作

2022年9月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

冒頭から尋常じゃない映像表現と画面から漏れ出る圧に面食らい、そのまま文字通り疾走する物語を体験しました。これは確かに、色々な人が「とにかくすごい」、「言葉には言い表せない」と評しているのも納得です。しかもたまたまみることのできた回は、一回限りの夜間上映で、現実の状況も『マインドゲーム』鑑賞に最適化されていたのでした。

物語としては実はそれほど複雑ではなく、「今、物語上何が問題となっているのか」を意外に丁寧に提示してくれるので、その点で迷子になることはありません。しかし一つの挿話から次の話に移る際の飛躍がものすごく、さらに湯浅監督渾身の超絶作画と、時にはすごいのかなんなのか良く分からない美的センスが炸裂しているため、ぱっと見るとアナーキーな印象を受けてしまうのです。カット割も時として時系列も文脈も無視しているようなインサートカットを多用しているのですが、徐々に意味不明なショット同士の繋がりが見えてくると、冴えない男と何を考えているのかよく分からない女性によるハチャメチャな逃避行というレベルを超えた、「時間」や「運命/必然」を描いた作品であることが分かってきます。

『日本沈没』(2020)は正直言って途中で白けてしまった観客なのですが、本作は湯浅監督のむき出しの思考の一端が見えたようで、とても面白く鑑賞しました。あまり物語を説明的に語らず、映像だけでごり押しする方が作家性に合っているんでは…。

yui