ジャンプ(2003)

劇場公開日:

解説

失踪した恋人の行方を捜して彷徨う男の心模様を描いたドラマ。監督は、本作で監督デビューを果たした竹下昌男。佐藤正午による同名小説を基に、「赤い月」の井上由美子が脚色。撮影を「完全なる飼育 愛の40日」の丸池納が担当している。主演は「ネプチューン in どつきどつかれ」の原田泰造。文化庁支援作品。

2003年製作/115分/日本
配給:シネカノン
劇場公開日:2004年5月8日

ストーリー

「リンゴを買って来る」。そう言い残して、半年付き合った恋人・みはるが姿を消した。わずかな手がかりを頼りに、彼女の行方を捜し始める三谷。やがて彼は、幾つもの偶然が重なって、彼女が静岡へ向かったことを突き止める。だが、その後の足取りは杳として掴めず、知らぬ間に部屋も引き払われてしまった。何故、彼女は失踪したのか?何故、自分は一番大切な人の心の変化に気づかなかったのか?失意のまま、半年の時が流れた。ある日、三谷はみはるの生き別れた父・江ノ旗耕一が福岡の能古島にいることを知り、彼を訪ねる。果たして半年前、みはるは父に会いに来ていた! しかし結局、その父も彼女のそれからの消息を知らず、それを機に三谷はみはるのことを諦める決意をするのであった。ところが5年後、同僚の鈴乃木早苗と結婚し一児を儲けた彼は、出張先の福岡で思いがけずみはるの行方を知ることとなる。彼女は、伊万里で陶芸をしているらしい。そこで、伊万里に向かった三谷はみはると再会、失踪の訳を聞き出した。失踪の原因――それは、あの日に配達された早苗からの手紙にあった。そこには、早苗の三谷に対する愛が綿々と綴られており、みはるはその想いの深さに負けて彼の前から姿を消したのだ。では、もしあの時別の選択をしていたとしたら? それでも、今と結果は同じになっていたに違いない。そう確信した三谷は、みはると別れ、妻子の待つ東京へ帰って行くのだった。

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映画レビュー

4.0カルトクラシック

2022年2月15日
PCから投稿

明瞭に覚えている。VODにあったので懐かしく見た。

検索したら監督は竹下昌男という人で、これ一本しかなかった。
言わなくてもいいことだが、日本映画界では持ってない監督には仕事がめぐってくる。持っている監督は埋もれる。そんな傾向がある。(と思う。)

原作は佐藤正午。昨年(2021)鳩の撃退法が映画化された有名な作家だがじぶんは一冊も読んだことがない。それゆえ、どうこう言えるたちばじゃないが、あらためて見たら濱口竜介みたいだと思った。むろん当時(ジャンプは2004年の映画)濱口竜介はまだマイナーな存在だったので、あと付けの感想だが、佐藤正午の小説を竹下昌男が監督したこの映画には(なんとなく)寝ても覚めてもみたいな気配があった。

失踪を意味するジャンプはミステリーだがどことなくファンタジーの空気感をもっている。演出もしっかりしている。原田泰造と笛木優子というレアで異色な出演者、しかも笛木優子はSpoorloos(1988)のように冒頭で消え終局まで出てこなかった。

小説「ジャンプ」のウィキペディアに、
『監督は原作者の佐藤正午と20年来の友人である竹下昌男。それまで助監督を務めてきたが、本作がデビュー作品になった。』
と、あった。
佳作は理由をもっているものだ。と思った。

松本清張にゼロの焦点という小説がある。そこでは結婚したばかりの夫が消える。「消える理由のない者が、こつぜんと消える」のはミステリーの醍醐味ではなかろうか。妻は夫が消えた北陸へ出向いて行方を追う。
──同様にこの映画も消えるはずのない彼女が消えてしまった男:原田泰造が輾転と人探しする映画になっている。

牧瀬里穂も出演していた。じぶんだけかもしれないが牧瀬里穂という名を聞くたび、もっといける人だったのに──と、そこはかとない遺恨をかんじる。むろん牧瀬里穂は成功した女優にちがいないが、同時代人としては、もっと冠ポジションとれる人だった──という気がしてならない。
言わなくてもいいことだが、日本映画界では持ってない女優(以下割愛)。

とりわけ、この映画の鈴乃木早苗役の牧瀬里穂は、その控えめなスタンスを具現したような役だった。
映画を見た当時は(おそらく初めて見た)笛木優子の珍しさに惹かれていた──と記憶している。
それもあって陰でずっと主人公を慕っていた牧瀬里穂の演じるキャラクターがとても地味に見えた。──わけである。

恋愛よりミステリーに比重するが、失踪劇の主因は鈴乃木早苗役の牧瀬里穂の愛であり、物語は愛された男の幸福感へ帰結する。そのふわりとした感覚が(なんとなく)濱口竜介を思わせた。また笛木優子のぎこちない棒演技に、唐田えりかのような魅力があった。いまさらだが、これはカルトではなかろうか。

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津次郎
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