劇場公開日 2003年12月6日

「【”彼を食べて、彼に食べられた。”孤独な男女の長距離トラックロードムービーであり、お互いが心を癒し合う恋愛物語。寺島しのぶ演じる心の揺れに悩まされる女と大森南朋の確かなる演技に引き込まれる作品。】」ヴァイブレータ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”彼を食べて、彼に食べられた。”孤独な男女の長距離トラックロードムービーであり、お互いが心を癒し合う恋愛物語。寺島しのぶ演じる心の揺れに悩まされる女と大森南朋の確かなる演技に引き込まれる作品。】

2023年12月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

知的

幸せ

ー ご存じのように、廣木隆一監督は、青春映画を多数撮っているが、今作後も瀧内公美さん主演の「彼女の人生は間違いじゃない」など、社会派作品の監督を務めたりする多彩な作品を作り上げる監督である。-

■自分の頭の中で聞こえる「声」に悩まされ、不眠や過食、食べ吐きを繰り返していたアルコール依存症の自称ルポライター・レイ(寺島しのぶ)。
 ある雪の夜、コンビニでひとりの若い男(大森南朋)に目を留めた彼女は、「彼を食べたい」という直思いに駆られ、男の4Tトラックに同乗し冬の町へ向かう。

◆感想<Caution! 内容に触れています。>

・トラックの中で交わす何気ない二人の会話が、何とも言えず良い。男は妻子がおり、ストーカーに付きまとわれて困っているとか、無線で他のトラックドライバーと遣り取りをする。
ー 男を演じた大森南朋さんの、飄々とした自然体の演技が良い。彼はレイが吐きたいと言った時にも、彼女を降ろすことなく窓から吐しゃする彼女の姿には気も留めずにトラックを走らせるのである。-

・レイの揺れる心の想いが縦書きテロップで流れたり、頭の中に流れる”誰かの声”の使い方も上手い。

■二人が、トラックでラブホテルに入り一緒に入浴するシーンは何故か心に響く。男が愛おし気に女の身体を抱きしめるシーン。彼女の心の声も語っているが、優しい男なのである。
 そして、翌日二人が食堂で食事を摂るシーンも良い。男は食事を口にしないレイに”食べなよ。”と声を掛け、”吐いちゃうから。”と言うレイに”トラックの中でなければ良いよ。”と言うシーン。その言葉を聞き、レイは割り箸を取り味噌汁を静に口に含むのである。
 そして、男は自分に妻子も居ないし、ストーカーも居ない事をアッサリと認めるのである。

■そして、男はレイに”トラック運転してみる?”と聞き、丁寧に助手席から彼女に指示するシーン。
 それまで見せなかった満面の笑顔を浮かべ”凄い!”と喜ぶレイ。彼女にはそれまで頭の中に流れていた「声」は聞こえてこない。

<今作は、孤独な心を持った男女の長距離トラックロードムービーであり、お互いが心を癒し合う、恋愛物語でもある。
 寺島しのぶと、大森南朋の確かなる演技が、この作品の風合を善きものにしている事は間違いないであろう作品でもある。>

NOBU
Mさんのコメント
2023年12月20日

いい映画でしたよね。心が安らぐ作品でした。
もともと大森さんは好きなのですが、さらに好きになりました。

M