劇場公開日 1994年7月30日

「心の中も不毛の地になってしまった」アリゾナ・ドリーム あんゆ~るさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0心の中も不毛の地になってしまった

2010年6月29日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

難しい

1994年フランス映画。140分。今年40本目の作品。奇才エミール・クストリッツァ監督のアメリカを舞台にした作品で、恐らく唯一の英語による作品。主演はジョニー・デップ。

内容は;
1,NYで魚を計測する仕事をしている夢追い人の主人公は、不毛の地アリゾナで車の販売会社を経営する父の再婚のために帰郷する。
2, 主人公に跡継ぎを密かに望む父は、試しに会社のセールスマンをやってみないかと持ちかけ、彼は乗じる。
3, そして主人公は、空を飛ぶ夢を持つ再婚相手の女性と恋に落ちてしまう。

クストリッツァらしい祝祭的なタッチの中で繰り広げられる奇天烈な人間模様。しかし、今作は他のクストリッツァの作品と比べてかなり異色な仕上がりになっています。クストリッツァと言えばやはりヒューマンドラマが核にあるのですが、本作の場合はその奥に抽象的で民俗学的なテーマが色濃く流れています。

そして、それが観ててなかなかつかめない。
すると物語の流れが、頭の中で流れにならずぶつ切れ感がずっと続いているかのようになり、140分間がとても長く感じられるようになる。

クストリッツァ監督は、恐らくアメリカにおいて「夢」というものが歴史の流れと共に変容してしまったことを伝えたかったのだと思う。しかし、今作のもつメッセージが終始遠くにあるような感覚がして、正直わたくしは置いてけぼりになりました。

ワンシーンワンシーンはクストリッツァ監督らしい楽しい描写のオンパレードでそれなりに楽しめますが、それぞれのシーンがどこに向かおうとしているのか掴めない作品でした。

ちなみに本作はベルリン映画祭で絶賛されたらしい。そう考えると、わたくしのこの低い評価は単に映画を観る能力が不足している故のものです。それでも高評価をつけると嘘になってしまうのです。

前のゴダールは分らなくても面白かったが、これは分らなくて退屈だった。映画の感想を書くって難しいです。

あんゆ~る