劇場公開日 1986年1月15日

「二人の情感のほとばしりが感じられず…」鑓の権三 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0二人の情感のほとばしりが感じられず…

2022年2月26日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

各登場人物には何の救いも感じられず、
なんとも後味の悪い鑑賞となった。

ある意味、封建時代における理不尽な
悲劇物でもあるのだろうが、
例えば小林正樹監督の「切腹」のような
そんな強い時代感も得られず、
全ての不幸が
おさゐ(岩下志麻)の個人的な対応の拙さが
原因と感じるばかりだった。

時代性に迫るのでないなら、
同じ近松物の映画化作品の
「心中天網島」や「曾根崎心中」のように、
もう少し主人公二人の情感を
濃厚に描くべきだったと思う。

この作品では中盤での、娘に対する
「そなたがいやなら母が夫に持ちたい位」
とのおさゐの発言だけでは、
悲劇に至る伏線になり得ていない。

ここは作品の冒頭から二人の情感の伏線を
張り巡らせるべきで、
原作がどうなのかは分からないが、
せめて演出としては描くべきでは。
そうでなければ鑑賞する立場としては、
二人への共感は生まれ難く、
作品への評価にも影響したような気がする。

コメントする
KENZO一級建築士事務所