劇場公開日 1951年11月23日

「すれ違いと和解」めし arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5すれ違いと和解

2019年7月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

周囲の反対を押し切って結婚して5年目の夫婦。
東京で所帯を持って、夫の仕事の都合で大阪に移って3年。
多分、小さな子どもの一人でも二人でもいれば、
妻が抱える「こんなはずじゃなかった」という空虚さはもう少し先延ばしなっていたかもしれない。
結婚するまでにもすったもんだあり、
その後、大阪に移ってようやく暮らしも落ち着いてきた。
同窓生に会えば、お金持ちの奥さまだったり、
独身生活を謳歌していたりと、
自分にももっと選択肢があったんじゃないかという思いが心の中に入り込んでくる。
そこに、夫を慕う姪が縁談を嫌って家出してきたり、
いまだ独身の従兄に再会したりで、
妻の心は揺れる。
妻のその心の揺れを感じ取れない夫。
そこにすれ違いが生まれる。
こういうすれ違いを何度も乗り越えて、本当の夫婦になっていくんだろう。
時代は関係なく、どこの夫婦にもありそうな話だが今の日本映画界では、悲しいかなこういう普通の話は映画にならない。
つましい暮らしの中でも、大輪の薔薇のような原節子の存在感は圧倒的で、どことなくボンクラな感じの上原謙も素敵。
上原謙と加山雄三、親子で成瀬作品に出演していたんだな。
佐野周二、原節子共演の『驟雨』も好きです。

arakazu