無能の人

劇場公開日:

解説

多摩川の河原で石を売る男とその家族を中心に、現代社会から落ちこぼれた人々をユーモラスかつ暖かく描くドラマ。つげ義春原作の同名漫画の映画化で、脚本は「われに撃つ用意あり」の丸内敏治が執筆。監督は本作が第一回作品となる俳優の竹中直人。撮影は「さわこの恋」の佐々木原保志がそれぞれ担当。

1991年製作/107分/日本
配給:松竹富士
劇場公開日:1991年11月2日

ストーリー

多摩川で拾った石を売る助川助三。かつては漫画家として名をなしたこともあったが、時流に乗り遅れ、数々の商売に失敗した結果、思いついたのが元手のかからない石を売るという商売だった。来年は小学校に入る一人息子の三助を連れて妻・モモ子が団地を回るチラシ配りだけが一家の収入源である。ある日、石の愛好家の専門誌を読んだ助川は、素人でも参加できる石のオークションが行われていることを知り、主催者の石山とその妻のたつ子と出会う。久しぶりにあった漫画の依頼も断り、遠く山梨まで出掛けて採石した石を抱え、期待を胸に助川はオークションに参加するが、参加者は老人ばかりで活気がない。いよいよ助川の石がセリにかけられるが期待に反して、石が売れなかったばかりか、余計な出費がかさんでしまうのだった。それによって再び気まずくなる助川夫婦。助川は再びペンを取り、漫画を描き始めるが、どこも採用してくれず、彼は再び石屋を始め、繁盛させるために川を越えた競輪場の客をねらって自ら客を背負って渡し舟を開業。モモ子はそんな彼に愛想を尽かしてしまうのだった。翌日、河原は競輪の開催日とあって賑わい、助川の前にたつ子が現れ「店をたたんで二人で甲州で暮らさないか」と言う。助川はそれを振り切るかのように商売を続けるが、その時、たつ子は他の客を押しのけて助川におぶさり、彼はそのまま川を渡った。好奇の目を向ける河原の人々。その中に今にも泣きそうな顔をした三助の姿があった。そして、そんな助川を迎えにいく三助とモモ子。助川はふたりの手を取り、家路へと向かうのだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第15回 日本アカデミー賞(1992年)

ノミネート

作品賞  
監督賞 竹中直人
脚本賞 丸内敏治
主演男優賞 竹中直人
助演女優賞 風吹ジュン
音楽賞 GONTITI
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映画レビュー

5.0うまくいかない男の夢想と優しい家族

2021年6月27日
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泣ける

笑える

怪優怪演の見せ場のある反面、話自体は原作に沿って地味に淡々と進んでいきます。
観ていてカタルシスは得にくい映画ですが竹中直人監督がパンフで引用していた川島雄三監督の「生きていくことは恥ずかしいことです」という言葉の雰囲気が色濃く出ていて主人公の人生の選択の妙なズレやうまくいかない残念さにこちらも引き込まれ、もやもやします。
主人公の夢想シーンなど詩的で美しい場面でした。またなかなかうまくいかない主人公を支える奥さん役の風吹ジュンさんもとても素敵に見えます。
こうしてこの家族は宇宙の片隅でとぼとぼ生きていくのかと不思議な感覚で鑑賞できる映画でした。
冒頭部に原作者がぽつっと映っていてそれもまた面白く感じました。

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プンゲンストウヒ
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