劇場公開日 1969年8月9日

「えげつない傑作」人斬り 柴左近さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0えげつない傑作

2020年11月23日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

萌える

長年ずっと観たかった本作。たまたま当日になって新文芸坐のサイトを見てリバイバルを知り、やっと観ることができた。
未ソフト化なので期待のし過ぎは禁物だと思ったが全くの杞憂だった。また一つ邦画の超絶傑作に巡り会えた!

司馬遼太郎の短編「人斬り以蔵」を参考に橋本忍が脚本を担当。監督は五社英雄で主演を飾るのは勝新太郎。脇を固める仲代達矢に石原裕次郎。更には三島由紀夫の起用…これで傑作にならない訳がない。
喜怒哀楽どの表情も一々豪快な勝新。勝新にかかれば「人斬り以蔵」と恐れられていた岡田以蔵もこんなにも人間臭く愛嬌のある人物になるのか
裕次郎は爽やかで品があって余裕もある魅力的過ぎる坂本龍馬を好演
武市半平太は仲代達矢が演じているがナイスすぎるキャスティング。勝新がペコペコするほど凄みを利かせることができて尚且つ冷酷で狡猾な人物を演じることができるのはこの人以外考えられない
人斬り以蔵と同等に恐れられた「人斬り新兵衛」こと田中新兵衛を三島由紀夫。一流俳優の中にいても存在感はピカイチで、その迫力、特に切腹シーンは圧巻
この四人誰か一人でも欠けていたらここまで傑作にならなかった。

この作品を映画館で観れたことがとてつもなく幸せ。前から二列目のど真ん中の席に座り、浴びるように勝新を観ることができた。一列目に座ってる人はいなかったので、邪魔なものはなく、視界いっぱいに広がる世界を堪能できた。
こんな素晴らしい映画体験は、この先なかなかすることはできないだろう。

柴左近