劇場公開日 1980年8月2日

「これこそ世界最高峰の戦争映画にして、同時に世界最高峰の反戦映画でもあります」二百三高地 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0これこそ世界最高峰の戦争映画にして、同時に世界最高峰の反戦映画でもあります

2020年1月12日
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鑑賞方法:VOD

声を上げて号泣しました

戦争の悲惨をこれでもかと訴え、感情を震わせて伝えてきます
本作を、軍国主義を賛美しているとの批判は全くどうかしています
これ以上の反戦映画は世界を見渡しても有りません

インターミッションとエンドロールで流れる有名な主題歌がその反戦のメッセージを的確に伝え、かつ感情を強烈に揺さぶります

司令官としての乃木将軍の巨視的視点、最前線で戦う名も無き兵士達の苛烈な戦場の視点
そして銃後の日本での生活の視点を、夏目雅子の演じるヒロインの松尾、野際陽子の演じる乃木の妻とでみせます
この三つの視点を巧みに組み合わせて立体的に物語を紡いでいきます

希にみるような優れた脚本で、私達は金沢第9師団に応召された新兵4人、新任少尉の元小学校教師の小賀の5名とともに旅順攻略戦に参加することになります
映画の終盤にはその5名と私達は戦友になっているのです

単なる戦記物語ではありません
戦争の悲惨さをあざとく、これ見よがしに見せてくる安っぽいお涙頂戴でもありません

忠実に戦史を再現しつつ、戦争の悲惨さを同時に伝えます
日露戦争は第一次世界大戦を先取りしたような戦争だったのです
人類初めての大量殺戮の戦いを経験したのです
ですから決して乃木将軍が無能であったとは言い切れません

戦闘シーンは古今東西の戦争映画の最高峰です
ジョン・ウェインの硫黄島の砂も、史上最大の作戦、プライベートライアンでのオマハビーチの激戦シーンすら本作には遠く及びません
雨霰と飛び交う銃弾と砲弾の下、一面に戦死者が埋め尽くされていきます
地面は砲弾によって掘り返され月面のようになっています
銃弾が無くなるまで戦い、銃弾が底をつけば石を投げ合ってでも戦い、銃剣突撃し、最後には素手で掴みあうのです

さらには上面なヒューマニズムでは全く歯が立たない戦争の強烈な現実までも伝えてきます

国と国の利害の激突によって殺し合うかも知れないが、人間同士が敵視しあうものではない

そのようにあおい輝彦が演じる小賀は主張して美しい国日本、美しい国ロシアと小学校の黒板に併記して出征します
しかし、その彼がそれを否定してしまう現実
フィアンセの松尾もまた美しい国ロシアとは板書しようとして出来ませんでした

戦争するくらいなら殺されようと、繁華街でギターを鳴らして歌ってビラを撒く団塊左翼老人達の夢想的平和主義の空理空論を木っ端微塵に粉砕しています

山も、河も、季節も、愛も死にはしません
しかし人間はかくも簡単に戦場で死んでいくのです
殺されては何もなりません
けれども山、河、愛、祖国の平和な暮らし
それを守る為になら、確実にすり潰される運命を知っていても兵士達は死地に飛び込むのです
突撃に怯むことなく敵に向かって突進しているのです

本作には日章旗と共に旭日旗が数多く登場します
軍旗としても登場し、クライマックスではボロボロになってまでロシア軍と争奪戦をして山頂に掲げられます

旭日旗はこのような歴史と戦場で戦った無数の兵隊達の血と涙が染み込んだものだったのです

確かに軍旗として使われていますが、それは某国が主張するような侵略の旗印では決してありません
そぞろオリンピックに向けて難癖をつけて来そうですが、そんなものでは絶対にありません

名も無き兵士達が、祖国の山、河、平和名暮らし、愛する人、それを守る為に命を掛けていた名誉の旗なのです

それを侮辱するということは、私達のご先祖様の死を、血と涙、苦痛と苦悩を侮辱する事と同じ事です

それを再確認出来る事でも、本作を今観る価値と意義があります

乃木の仲代達矢、児玉の丹波哲郎、明治大帝の三船敏郎
彼らは正にその人にそのもののようです
そしてヒロインの夏目雅子は目を見張るような美しさでした
あれほどの戦場の悲惨さに釣り合うほどの美しさでした

あき240
Noriyukiさんのコメント
2021年7月17日

あなたの秀逸なコメントは私の胸の内で感じたけれど表現できないもどかしさを晴らしてくれる素晴らしい文章でした。

Noriyuki