劇場公開日 1988年12月24日

「本シリーズはバブルの頂上から、その長い長い下り坂の全てを記録したのだ思います」釣りバカ日誌 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0本シリーズはバブルの頂上から、その長い長い下り坂の全てを記録したのだ思います

2020年9月18日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、VOD

1988年12月の公開
バブル最高潮の頃、どこまでもいつまでもこの好景気が続くと誰もが思っていました
24時間働けますか?なんてCMソングが流れるのはその翌年からでした
今からしたらどんだけブラックなんだよ!と思うかも知れませんが、そうじゃなかったんです

確かに上の連中は交際費を湯水のごとく使ってましたが、ヒラはそんな余録はなく馬車馬のごとく働いていました

でも給与もどんどん上がって、時間外手当てだって青天井で支給されていました
どうかすると本給より多いくらい
だから深夜まで毎日残業して、そこから盛り場に飲みに繰り出して、午前様でタクシーで帰宅なんてザラ
ヒラだって金回りは良かったのです
将来は安定して約束されていたように思えたのです

ブラックなのは、それだけ働いたのに出すもの出さないからです
そして将来を約束出来ないからです
残業は○○時間までしか認めないとかから始まって、酷くなるとサービス残業の強要までする
交際費なんかもってのほか、事務用品までケチり出す
給与水準は下がってばかり
それでいて仕事の成果目標は高くなるばかり
成果を上げられないのは真面目に働いてないからだ!と社員を吊し上げる
会社が潰れるよりましだろう!
これがブラックです

1988年、この頃はまだブラックなんて言葉はなかったのです

この頃まではまだハマちゃんのような社員だって活かせる余裕が会社にはあったのです
5時から社員なんて流行語もありました
夜の接待や社内の宴会で大活躍する人です
これだって才能です
この仕事はこの方面の才能の無い人にとっては苦痛でしかないのです

バブルが過熱していよいよ人手不足が深刻化してきたのもこの頃
新卒は今から考えられないような大量採用でした

ぶらぶらしてるような社員はだんだんとまわりから白い目で見られるようになって来ていたのです

だから夢物語なんです
美しい夢なんです
だからヒットしたのです
余裕のあった頃を懐かしく思う物語だったのです

つまり家族的経営といわれた日本式経営が夢物語になっていったのです
だから社長と社員の家族的な温かい交流の物語がうけたのです

本作はヒットしてシリーズ化されて、なんと22作も作られて2009年まで20年も続きました

やがてバブルが崩壊して、経営の筋肉質化とか言われて実行されていきました
その実態はブラック化だったのです
ハマちゃんのような社員は真っ先に消えて行きました

その20年の途中で同じ夢物語でも意味合いが変わったのです
そして、より夢物語の度合いが強くなっていったのです

本シリーズはバブルの頂上から、その長い長い下り坂の全てを記録したのだ思います

あき240