劇場公開日 1973年12月29日

「警察権力が幅利かすデストピアと愛した男に再び裏切られる女」女囚さそり 701号怨み節 ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0警察権力が幅利かすデストピアと愛した男に再び裏切られる女

2020年8月15日
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鑑賞方法:映画館

梶芽衣子の代表的なシリーズで、最後のさそり役を演じている。

殺人と脱獄などで追われる、さそりことナミが、田村正和扮する工藤に匿われて心通わせるが、鬼警部児玉の罠に落ちる。

過去三作を独特の映像観で作り上げた伊藤俊也監督が降板して、日活時代からコンビでもある長谷部安春監督に代わりている。

シリーズ全作に関わっている脚本家による内容だが、伊藤監督のようなアングラ怪談調の描写がない分、作品全体のムードもかなり違う。長谷部監督は東映の環境に慣れてないからなのか、演出自体は重めで上出来ではないが、悲劇的な雰囲気は悪くない。ちなみに梶芽衣子は、さそりシリーズでは本作がお気に入りとのこと。

冒頭の警察が式場に強引踏み込むところから、分かるように、警察権力が、不気味に幅を利かす世界になっており、取り調べ時の拷問による冤罪なども日常的になっている雰囲気。

警察官が、女性看守長をレイプして従わせたり、容疑者に熱湯をかける拷問などを行なって障害を追わせたり、自分の手で死刑執行する為刑務所から連れ出したりと、何処の無法国家だ?な場面が続出。過去三作でも警察や刑務官は、悪辣に描かれていたが、ここまで酷くはない。

さそり役梶芽衣子は、変わらずクールな強い目力が魅力的で、元運動家を演じる田村正和の敗北感に苛まれる悲しい男との絶望的な愛と裏切りが胸を打つ。

警察から再び拷問や母親の説得を受けて、心が折れてしまう工藤の弱さと悲しさが切ない。
ただこの場面演技過剰なところもあるのである程度リテラシーがないとギャグに見えるかも。ちなみに隣の席の若者は笑ってた。

そんな工藤を愛してしまった、ナミの最後の行動で、シリーズに落とし前をつけた梶芽衣子のさそり最終作。

ミラーズ