劇場公開日 1980年8月30日

「全てを引き裂く大地震の猛威に備えなければ。」地震列島 syu32さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0全てを引き裂く大地震の猛威に備えなければ。

2018年8月23日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

 DVDで鑑賞。

 東宝が「日本沈没」や「ノストラダムスの大予言」などの“パニック映画路線”の一本として世に放ったディザスター・スペクタクル・ムービー。

 脚本が新藤兼人のためかハイライトである地震発生までの緊張感を巧に保ちつつ、主人公の地震学者・川津とその妻、そして不倫相手の三角関係の模様が昼ドラチックに展開されました。
 妻役の松尾嘉代の夫の不義を知ったときの眼光がめちゃくちゃ怖い…。女の情念が迸るようでした。不倫相手役の多岐川裕美は上品で可憐でとてもお美しい限りでした…。

 3人の話し合いの日が皮肉にも地震発生の日となってしまいました。
 不倫相手は住んでいるマンションが倒壊の憂き目に遭い、炎に巻かれながら決死のサバイバルを強いられました。崩れ行くマンションの実物大セットがとてもリアルで恐怖を掻き立てられました。もし自分がそこにいたら…と考えるとぞっとしました。
 一方、川津とその妻は話し合いの場へ向かうために乗った地下鉄で被災。決壊した隅田川の濁流が流れ込んだために地下トンネルに閉じ込められてしまいました。大勢の人々が取り残され、脱出の方法を探ることになる場面がスリリングでした。生存本能を剥き出しにした人の群れの中で、生き残りを賭けた重大な決断を迫られる究極の人間ドラマが待ち受けていました…。

 本作のテーマはズバリ“首都直下型地震”。
 地震学者などの有識者を招聘して練り上げた綿密なシミュレーションの下、中野昭慶特技監督の面目躍如たる大爆破を伴った迫力の特撮シーンにより、東京を襲う大地震の脅威を訴え掛けて来ました。
 倒壊した建物などで道が塞がれ、救助活動や消火活動が妨げられ消防隊が身動きの取れない状況に陥るなど、現状の大都市がその猛威に対していかに脆弱で無防備なものなのかを突き付けて来るようでした。

 大きな災害によって無残にも失われてしまうものに、無情なやるせなさを感じました。愛や絆、大切なものも何もかもを容赦無く引き裂いていく自然災害…いつか起こることは明白です。
 東日本大震災以降、地震や自然災害がその苛烈さを増す傾向の中、我々ができる備えを検討しなければならないなと改めて思いました。

しゅうへい