劇場公開日 1979年5月26日

「いつの日かまた、金田一の映画を!」病院坂の首縊りの家 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5いつの日かまた、金田一の映画を!

2016年11月28日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

興奮

監督・市川崑×主演・石坂浩二による金田一耕助シリーズ第5弾にして最終作。
原作でも金田一最後の事件。

廃屋に生首が吊るされた事件を機に、ある一族の忌まわしい過去が明かされていく…。

市川&石坂コンビのこの一連の作品は紛れもなく邦画史上に残る名シリーズ。
なので、一作一作どれもが傑作…とは言い難いのが本作。
はっきり言ってちと失敗作であった。

原作はシリーズ最長。
事件は一旦迷宮入りし、昭和28年と48年の二つの時代を股にかけ、金田一も事件解決までに20年もかかった言わば“超大作”。
それを、映画は昭和26年に限定して描いた為、まずスケールダウン。
故に、物語の展開も事件の経緯も登場人物も大幅にカット。
三世代に渡った法眼家の一族が二世代となり、その孫世代や金田一が愛着沸いた“アングリー・パイレーツ”ら若者たちの描写もほとんど描かれず。
この映画だけでも登場人物関係図はちとややこしいが、本来はもっと多くてもっと複雑。個々のドラマも複数派生。
原作をそのまま映像化したら、とてもとても2時間強に収まらない所か5~6時間以上にもなり、あまりにも話が長過ぎて飽和状態にも感じてしまうが、それが大河ドラマ的原作の醍醐味だっただけに残念でならない。

それから、最大の落胆はスタッフ・キャストのタイトルクレジット。
印象的な黒画面に曲がりくねった白の明朝体ではなく、至って普通…。

映画オリジナルキャラ、コメディリリーフで金田一の助手的な若き草刈正雄のイケメンっぷりと、一人二役、桜田淳子の美貌は見るものあり。
シリーズ皆勤賞の草笛光子、大滝秀治、小林昭二、三木のり平。
中でも、小林昭二には美味しいシーンが用意された。

犯人の隠し続けた哀しき過去とその動機。
犯人に同情的な悼みを禁じ得ない金田一と、犯人に仕えた小林昭二演じる人力車引きのラストシーンは、シリーズのトリを飾るに相応しいものであった。
(ついでに言うと、小説家Y役のアノ方の出演もね)

いつの日かまた、金田一がスクリーンに戻って来る事を信じて…。
我儘ながら、その時、「病院坂」の完璧な映像化も。

近大