病院坂の首縊りの家

劇場公開日:

解説

「病院坂の首縊りの家」と呼ばれる廃屋での連続殺人事件を解決する金田一耕助の最後にして最大の事件を描く。東宝の石坂浩二の“金田一”シリーズの五作目にあたるもので、脚本は「女王蜂(1978)」の日高真也と同作の久里子亭の共同執筆、監督は「火の鳥(1978)」の市川崑、撮影も同作の長谷川清がそれぞれ担当。

1979年製作/139分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1979年5月26日

ストーリー

昭和二十六年、渡米を控えた金田一耕肋は久しぶりに昔馴染の老推理作家を訪ねると、パスポート用の写真屋を紹介される。本條写真館を訪ねた金田一は、そこで、経営者の徳兵衛から、最近、誰かに狙らわれているようなので、調べて欲しいとの調査依頼を受ける。その夕、ある少女が結婚写真の撮影依頼に来た。徳兵衛の息子、直吉が撮影に案内された所は、何と、首縊りの家と呼ばれる明治から終戦直前まで繁栄した法眼病院跡だった。終戦の翌年に山内冬子という女性がこの家で縊死したのがその名の由来である。直吉はそこで、依頼に来た少女と瓜二つの花嫁とある男の写真を撮った。翌晩、また写真を撮って欲しいと同じ少女の声で電話が入り、本條父子、弟子の黙太郎、金田一が撮影現場に行くと、天井から花婿になった男の生首が縊られていた。そして、黙太郎が暗がりから逃げようとしたジャズ・コンボのギタリスト・吉沢平次を捕えた。現像された写真を見た徳兵衛は、花嫁が法眼家の娘・由香利と酷似しているのに驚く。「生首風鈴殺人事件」捜査本部が設置され、等々力警部は家主、法眼弥生、由香利、五十嵐滋、田辺光枝、死体発見者の四人、容疑者の吉沢を集めた。吉沢は花婿、花嫁は血のつながりのない山内敏男、小雪兄妹で、街はづれの空きガレージに往んでいると証言した。やがて金田一は、敏男と小雪が終戦直後に縊死した冬子の遺児であることをつきとめた。捜査本部へ小雪から遺書が届いた。「血のつながりのない兄との結婚を断ったことから争ううち、兄を刺してしまい、息絶える寸前、母を不幸な死に追い込んだ法眼家への復讐の念を燃やす兄は、自分の首を母が死んだ場所に吊るすことを遺言した。私はそれを実行し、母、兄の許に旅立つ……」といった内容だった。だが、金田一の推理通りその遺書から小雪の指紋は発見されなかった。数日後、徳兵衛が殺された。続いて、吉沢も殺された。金田一は黙太郎の協力で、法眼、五十嵐一族の複雑な系譜と恐怖の事実を発見した。弥生は十五歳のとき、母千鶴の再婚した夫、五十嵐猛蔵に犯され、子供を産んだ。猛蔵は犯している姿を、法眼家に出入りしている写真屋、徳兵衛に写真に撮らせた。そして、産んだ子は、すぐに里子に出され、冬子と名付けられるが、偶然にも、後に弥生の夫、琢也の愛人となった。弥生と琢也の間に由香利、冬子と琢也の間に小雪が産まれたのである。そして、小雪と兄の敏男は、母の復讐のために、由香利を誘拐して強制的に結婚写真を撮ったのだが、誤って由香利を殺してしまう。敏男はガラス片で自分の喉を刺して自殺を企り、小雪に首を切って法眼病院に縊るように告げて息絶えた。一人になった小雪は弥生に電話をして、由香利を殺したこと、母の冬子が弥生の娘であることを話す。最初は取乱した弥生も、小雪があまりにも自分の境遇に似ていることに同情し、彼女を由香利にすり替えることにした。そして、二人で敏男の首を縊ったのである。一方、徳兵衛は、終戦直後から、猛蔵に犯される十五歳の弥生の姿のあの写真(彼女を強請り続けていた。徳兵衛は忍耐しきれなくなった弥生に殺されたのだ。吉沢も、由香利と小雪がすり替ったことを知ってしまったために弥生に殺された。金田一が事件の謎解きを終えると、法眼家の屋根裏にひっそりと住んでいた弥生の老母、千鶴が息をひき取ったと車夫の三之助が伝えに来た。等々力警部一同は屋根裏部屋にかけ上がった。老母の周囲に集まった一同の中に、弥生の姿がなかった。弥生を捜す等々力警部と刑事たち。庭に出た金田一は、徳兵衛の暗室で見つけた写真のガラス製のカン板を石に落として割るのだった。一方、弥生は車夫の三之肋の引く車で法眼病院跡に向かった。そして、病院跡に着いて、三之助が、車のシートを開くと、舌を噛んでうっすらと血を流す弥生の姿があった……。

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映画レビュー

3.0桜田淳子がこんなにきれいだったとは

2023年11月23日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

桜田淳子がこんなに歌えるとも、当時は知らなかった。色白で目もきれいで、見とれてしまった。しかし、横溝正史作品は、いつも女性が酷い目に遭うのが嫌だねえ。

BS松竹東急の放送を録画で鑑賞。

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ぷにゃぷにゃ

4.0石坂金田一

2023年10月1日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

横溝正史が書くミステリーは、人里離れた村の古い風習や血縁ある者たちの隠された因果に関わるものが有名ですが、ご本人の複雑な生い立ちが深く関係していると聞いたことがあります。それらの物語が全くの絵空事ではなく、何となく日本人のDNAに刻まれているかのような気分にさせられるので、とても怖く、一方で他人事ではないように思えて引き込まれます(汗;)。今作は、桜田淳子の二役がなかなか名演でよかったのですが、出生の複雑さもあって、どっちが由香利でどっちが小雪が頭がこんがらがりました(苦笑)。佐久間良子の存在感は流石でした!美しさゆえに、あんなことに…。世の中には様々な殺人事件がありますが、単に自己欲望を満たすための短絡的なものではなく、今作のような悲しい物語には、しみじみとした後味が残り、それを体現してくれるのがまさに石坂浩二さんの金田一耕助だなと改めて実感しました。

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赤ヒゲ

4.0桜田淳子すごいな

2022年8月1日
iPhoneアプリから投稿

なんて複雑で悲しい映画でしょうか
久しぶりに見直したけど桜田淳子さんの演技すごいな

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共感した! 3件)
kazu00910

3.5横溝氏本人の寒い芝居でスタート。前作ヒロインの中井貴恵は格下げで空...

2022年7月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

横溝氏本人の寒い芝居でスタート。前作ヒロインの中井貴恵は格下げで空気(笑)
きっとこの人が犯人だな。はい当たりー、ぶれない姿勢が好きです。本筋と関係ないところで楽しめるのは健在。しかし、今回の殺人はかなり無理筋。そんなに簡単に殺せません。ましてや首チョンパは不可能でしょ。
桜田淳子だ、狂気の演技、怖い、さすが統一◯◯。草刈正雄助手がなかなかいい味。
加藤武、毎回なんで金田一と初対面っぽい?認知症か(笑)「よーし、分かった。犯人は滋だ」親の前で言うなよ。最後、おいしいとこどりは前作同様。
萩尾みどり、メインではないが心に残る美しさも前作同様。前作同様と言えば、地方捜査で手がかりくれる不気味おばさんもそうだよな、今回ツボった(笑笑)坂口良子がいないのだけが残念であった。

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はむひろみ
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