劇場公開日 1978年6月3日

「本土人の身勝手な空想としての「オキナワ」」沖縄10年戦争 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0本土人の身勝手な空想としての「オキナワ」

2023年6月30日
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ヤクザ映画はアメリカの西部劇や香港のカンフー映画と同様に固定的なフォーマットの中でいかに先達との差異を生み出せるかが腕の見せどころであるはずだが、本作に関していえば沖縄という格好の素材をベースにしているにもかかわらずそれをほとんど有効に活かせていない。随所に言及される沖縄は結局のところ本土人から見た異国としての「オキナワ」でしかなく、ハブ酒だの英語を喋る娼婦だのといった浅い表象に留まっている。

本土と沖縄という対立線を引こうにも、そこに歴史や政治の重みはなく、せいぜいありふれた都心vs地方的な確執性しか感じ取れない。それならば『北陸代理戦争』なんかのほうがよっぽど面白い。要するに舞台が沖縄である必然性がない。随所で炸裂する琉球語も目配せでしかなかったし、カッコよさという点でも『仁義なき戦い』の広島弁や『緋牡丹博徒』の九州弁に遠く及ばない。

セリフや行動のカッコよさが著しく欠如しているというのもかなり痛い。全体的に説明臭いし、ところどころトレンディドラマみたいな甘っちょろいセリフ回しが出てきて萎える。コワモテのオッサンが次から次へと登場するのにイマイチ締まらない。そう考えるとどんなに演出や撮影が拙くてもビシッと締まる笠原和夫のセリフ回しはマジですごいんだな、と改めて。

実録ブームに便乗しただけの平々凡々な作品、というのが率直な感想だが、海洋博を面と向かって失敗と言い切るナレーションだけは容赦なさすぎてちょっと面白かった。あとは最後の最後までメインのキャラクターが死なないというのも珍しい。松方弘樹が懊悩の果てに空高く打ち上げた銃弾が元同胞の千葉真一に対する威嚇でもあり祝砲でもあり弔辞でもあるという多層性もなかなかよかった。

因果