美しさと哀しみと(1965)

劇場公開日:

解説

川端康成の同名小説を「暗殺」の山田信夫が脚色「暗殺」の篠田正浩が監督した女性ドラマ撮影もコンビの小杉正雄。

1965年製作/103分/日本
原題:With Beauty and Sorrow
配給:松竹
劇場公開日:1965年2月28日

ストーリー

鎌倉に住む作家大木年雄は、新しい年を京都で迎えたいと心誘われていた。大木の心の中には、京都で絵筆をふるう上野音子の面影がよぎった。二十年前大木は、妻子ある身で少女であった音子を愛した。大木の子供をみごもった音子は、その日から平凡な女の倖せを奪われ、死産というショックを経て、自殺を計った。そして大木はこの事件を描いた作品で文壇に地位を築いたのだった。大木が京都を訪れた時、迎えに出たのは音子の弟子の坂見けい子だった。そして音子と会った大木は、その冷やかな態度に、ある虚しさが残った。唯、「少し気違いさんです」と紹介されたけい子の妖しい魅力に、惹かれるものがあった。けい子は、音子を姉のように慕っていたが、音子から大木の話を聞くと、彼女は大木への復讐を誓った。梅雨の頃、けい子は自作の絵をもって、鎌倉の大木の家を訪ねた。私立大の講師をする一人息子太一郎の案内で、けい子は楽しい日を過した。その夜けい子は大木に抱かれた。けい子から大木との、一夜を聞いた音子は、なぜか嫉妬心にかられた。年月がたつにつれ、音子の心の中で大木との交情が浄化されていた。そして、妖しいけい子との同性愛に溺れる音子であった。夏のある日、京都を訪れた太一郎を、けい子は琵琶湖へ誘った。「音子先生の復讐を太一郎さんでやるんだ」けい子の心は高なった。小倉山の二尊院で太一郎はけい子を抱いた。翌夕、モーターボートに乗った二人は、沖へと出た。音子がラジオのニュースを聞いてかけつけた時、けい子はベッドに寝かされ、太一郎は行方不明のまま、捜索船が動きまわっていた。けい子の寝顔に涙がひと筋光っていた。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.5レズビアンは(目的を持って)男を誘惑して最後までいってもばれにくいだろうが、ゲイは女を誘惑しても最後でばれちゃうだろうなァ。川端先生は分かっておられたんでしょうねぇ。三島先生はどうだったのかな。

2022年7月3日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

①日本の本格的レズビアン映画って珍しいのかな。京風屋敷の和室の中、襖・美しい着物に囲まれて生々しい描写は最小限に抑えられているのに溢れでてくる女同士の官能の匂い。②本作は1980年代にフランスでリメイクされているけれども、何となくどうして川端康成が海外(特に欧州)で愛されているのか分かるような気がする。③加賀まりこは、師匠といる時と男といる時との目の表情が全く違うことに感心。まだ若いのに雫ない着物姿の時の妖艶ぶりは後年の『泥の河』でのトンでもない年増の色気が突然変異でないことを伺わせる。④八千草薫は私達の世代には良い家庭の優しいお母さんというイメージが強いが、こんなに色っぽい役もやっておられたとは。表面的な色気ではなく楚々とした美しさの中に秘められた魔性のようなもの。それは描いている画にも現れているし、加賀まりこが復讐のことを口にする度に怒るが、実は心の底では加賀まりこを操って復讐を遂げさせたことを渡辺美佐子に見破られてしまう。⑧山村聡は貫禄もありながら壮年の色気も漂わせて適役。しかし自分のやってきたことに(不倫で16歳の娘に妊娠させ、挙句死産させて数年間精神病院に入院させた顛末を小説にして一気に有名作家に、その後も小説の肥やしか相手をとっかえひっかえ不倫は続けたらしい)あまりな無自覚なのは小説家ってこんなもん?川端康成の小説家というものへの一種の自虐的ネタかしら。昔自分が酷く傷つけた女性とただ除夜の鐘を聴くためだけに京都へ来るなんて何を考えているのやら。まあ、それが悲劇の始まりなんですけど。しかし、あの除夜の鐘の最初の音はインパクトありました。⑨渡辺美佐子はこの頃からエキセントリックな演技は得意だったんですねぇ。本能的なところで女は女の怖さが分かる、というところを実に自然に表現していたと思う。ただ、山本圭の母親役としてはちょっと若かったように思われ、例えば原節子が杉村春子級の演技派女優になっていてこの役を演じていたら面白かったのに、とか思ってしまった。⑩その山本圭演じる太一郎は加賀まりこ(兼八千草薫)の復讐の対象となってしまい哀れだが、この当時(1960年代)、良いところのお坊ちゃんでインテリで真面目だけれども内省的な青年を演じるのに山本圭はピッタリだったんでしょうね。『若者たち』でブレイクする前で、演技的にまだ硬いところはあるけれど、ビジュアル的には頬もスッキリしてこの頃が一番イケメンだったかも。⑪ラストの加賀まりこの涙は何の涙だったのだろう?罪悪感?後悔?自己憐憫?覚悟?

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もーさん

3.0川端康成の世界

2021年10月23日
Androidアプリから投稿

美しい日本画家(八千草薫)に思慕を寄せる
これまた美しい内弟子(加賀まりこ)の復讐譚

舞台は京都や北鎌倉
内弟子に誘惑される小説家とその息子

日本画家は美しい和服姿で大作に挑む
作務衣なんか着ないのね

川端康成の妄想と願望と様式美の世界を感じました

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jarinkochie

3.5小説の筋をかなり忠実に映画化しているのみで、映画としての独自の価値を追求した作品とは至っていないのが残念でした

2021年10月22日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

文豪、ノーベル文学賞作家の川端康成の原作
1961年から1963年にかけて婦人公論に連載され、1964年に全集に収録、1965年2月20日に単行本として刊行されたもの

本作は1965年2月28日公開
だから今でいうメディアミックス戦略だったのかも知れません

松竹の川端康成の原作による映画は戦後では5本
1963年 古都
1965年 美しさと哀しみと(本作)
1965年 雪国
1966年 女のみづうみ
1968年 眠れる美女

人気作品の「伊豆の踊り子」は日活と東宝版しか有りません
特に1963年の吉永小百合主演の日活版、1974年の山口百恵主演の東宝版が有名です
松竹も本当ならば本作より「伊豆の踊り子」を映画化すべきだったと思います
しかし、当時最高の人気女優の吉永小百合の日活版がヒットしているので、回避して「雪国」を選択したと思います
本作は原作が初刊行されるので、企画が別途持ち上がったかと思われます
まあ、「古都」と本作は川端康成が同時平行して執筆した作品なので、映画もそれと同じように平行して公開したという趣向なのかも?

内容は、良く言えば「美しさと哀しみに満ちた人生の抒情と官能のロマネスク物語」
川端康成本人の事のことを書いているようで、実はかなり空想と誇張で脚色した小説です
お話は、実のところかなりゲスいものです
こういう作家が実在したら現代ならネットで炎上間違いなしで、下手をすると作家生命も危ういでしょう

映画としては、あまり成功しているとは言えません
篠田正浩監督作品なので期待したのですが、それ程エキセントリックな演出もありません
八千草薫のエロシーンも控えめです
お話の内容だけで、当時は十分にエキセントリックだったのだと思います

八千草薫の演じた音子が描く絵画を、エロスの作家として知られる池田満寿夫の作品を使用していることはなかなかの選択です
でも八千草薫には似合ってません
彼女には日本画の雰囲気しかまとっていないのです

「古都」を踏襲した武満徹の音楽も、本作ではさほど効果が上がっていません

ただ、加賀まりこは、川端康成が誉めたほど、コケティッシュで小悪魔的で良かったと思います

やはり全体の印象としては、小説の筋をかなり忠実に映画化しているのみで、映画としての独自の価値を追求した作品とは至っていないのが残念でした

劇中冒頭に主人公が泊まるホテルは、蹴上にある都ホテルです
本作の翌年にウェスティンホテルズと業務提携して、2002年からウェスティン都ホテル京都と名称も変わりました
正に京都の迎賓館と言うべき最高級ホテルです

因みにに京都駅南側すぐに新幹線から見える都ホテルは1975年の建設で公開当時はまだありません
こちらはどちらかというとビジネスホテル風です
つい最近売却されたようです

劇中終盤に登場する琵琶湖ホテルも実在します
1934年開業、ヘレン・ケラーやジョン・ウェインもかって泊まった格式のある国際観光ホテルでした
戦後は1957年まで米軍専用ホテルとなっていました

蹴上の都ホテルが京都の迎賓館なら、こちらは京都の奥座敷のようなところです

今は、場所も浜大津に移転して近代的なビルに建て替えられいます
しかしグレードの高い、そこに居るだけで気分が高揚するホテルの雰囲気は変わらないようです

客室には、かっての瓦屋根のある東京九段の靖国会館みたいな和風の近代な建物の白黒写真が飾ってありました
その横に小さく旧ホテルの歴史を和文と英文で誇らしげに書き添えてあるのを読み、現代にまで続く伝統を知りました

大津市の琵琶湖西岸にある柳が崎湖畔公園はその跡地です
旧ホテルは、「びわ湖大津館」となってレストランもある文化施設といて公開されています

ひと昔前、大阪道頓堀のとあるバーで77歳の素敵なマダムとお話する事があり、旧琵琶湖ホテルに、早朝急に思い立って芦屋のご自宅からわざわざ朝食を食べに行かれたという優雅なエピソードを伺ったことを思い出しました
久方ぶりだったのに支配人が顔を覚えていてくれていて、朝日に湖水がきらめくのが一番よく見える良い席に案内してくれたそうです
きっと本作の時代の少しあとの事だと思います

その77歳のマダムも本作の頃は加賀まりこが演じたけい子のような女性だったのでしょう

移転後の今の新しい現代的な琵琶湖ホテルの朝食も素敵でしたが、昔の時代はいま以上にもっと海外のような風情だったのでしょう

お近くに起こしなら是非お泊まりになってみてください
京都へはすぐですから

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あき240

4.0女優人が素晴らしい

2019年5月19日
Androidアプリから投稿

川端康成の小説を読んで見たが、女優陣が素晴らしい。良く表現している。

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M.Joe
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