異母兄弟

劇場公開日:

解説

田宮虎彦の原作を、「ともしび」の寺田信義が脚色、「仇討崇禅寺馬場」の依田義賢が改訂した。監督は「こぶしの花の咲くころ」の家城巳代治。撮影は「黄色いからす」の宮島義勇。主な出演者は、「黄色いからす」の田中絹代、「ニコヨン物語」の三國連太郎、「女だけの街」の高千穂ひづる、「まだら頭巾剣を抜けば 乱れ白菊」の中村賀津雄、「警視庁物語 追跡七十三時間」の南原伸二。ほかに、飯田蝶子、近藤宏、島田屯、永井智雄など。

1957年製作/110分/日本
劇場公開日:1957年6月25日

ストーリー

利江は陸軍大尉鬼頭範太郎の家へ女中奉公に出た。やがて利江は範太郎に手ごめにされて身ごもり、範太郎の病妻つたは一郎司、剛次郎の二児を残して死ぬ。範太郎は、ただ、世間体だけから利江を後添えにしたが、雇い女としてしか取扱おうとせず、一郎司、剛次郎にも、お利江と呼ばせ続ける。やがて十年の歳月が流れ、範太郎は連隊長、一郎司は陸士、剛次郎は幼年学校に在学、利江の生んだ良利は十二歳、智秀は六歳、そして利江は脂ののった女盛りになっていた。範太郎は依然として利江を虐げ、良利、智秀をも異母兄達ときびしく差別した。台所の片隅、そこが利江たちに与えられた部屋だった。それからまた十年。範太郎は少将で予備役となり、在郷軍人会の分会長をしていた。一郎司、剛次郎とも出征した。相次ぐ二人の勝報は範太郎にとり最上の誇りだった。良利も海軍少尉となり出征した。中学四年になった智秀は学業はできたが病弱だった。そうした智秀を軍人の家の面汚しと感じている範太郎は、ますます智秀を虐げた。新しい女中のハルは、親身に智秀をいたわった。智秀はハルの部屋に憩いの場所を見つけた。二人の心は急速に結びついて行ったが、範太郎に感づかれて智秀は勘当された。婆やの実家に預けられた智秀は、ハルが身売りされたことを知り、その面影を求めて家出する。そして終戦--。出征した三人とも戦死し、範太郎はすっかりうつけてしまった。利江に家財道具を売り払わせては、飲みふけた。そんなある日、飯場を渡り歩いていた智秀が帰ってきた。利江は狂喜した。が範太郎は寄せつけなかった。噴きあげる怒りに利江は初めて範太郎を見据えて言った。「智秀はあなたの子です。私ばかりの子ではありません。……もう言わせてもらいます。……私はもう女中ではありません!」

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映画レビュー

4.0非国民とさげすまれ・・・

2019年1月16日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 陸軍大尉鬼頭範太郎の三國が若い。「妾の子」と前妻の2人の兄に蔑まれるが、言葉の意味もわからない四男。時が流れ、軍人にならないと言う三男。厳粛なだけの家庭で閉塞感を感じ、逆らえないが反発心だけは体に染み付いていった。

 大戦が始まってから、武勲を立てた次男。誇りに満ちた範太郎と、三人で家を抜け出そうと提案する息子たち。幸せな生活を求めたいだけなのに、世の中全体が戦争へと駆り立てる風潮であっては難しいなぁ。

 四男が女中ハルと抱き合っていたのを咎められ、家を出てしまい、非国民と言われながらも真剣に生きていく様が良かった。前妻の子だけを想うあまり、後妻の子は自分の子ではないような振る舞いをする範太郎。利江だけは、家を出ていこうと主張する息子には同調せず、範太郎に「同じあなたの子どもよ」と子どもを認めさせようと訴える。たくましい昭和の愛をも感じさせる田中絹代が素晴らしかった。

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kossy
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