劇場公開日 1998年12月19日

「【人間の生命の死と生を見事に喝破した作品。且つ男の愚かしさを許容する、菩薩の如き女性達の懐の深さと、逞しさと優しさを描いた作品である。】」あ、春 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5【人間の生命の死と生を見事に喝破した作品。且つ男の愚かしさを許容する、菩薩の如き女性達の懐の深さと、逞しさと優しさを描いた作品である。】

2023年2月8日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、VOD

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ー 私は、相米慎二監督作品は「台風クラブ」をDVDで鑑賞しただけである。
  で、一番驚いたのはこの方が逝去された年齢である。僅か53歳である。
  森田芳光監督が60歳で急逝された際にも驚いたが・・。
  だが、(殆ど作品を鑑賞していない青二才が言う事ではないとは重々承知の上で、)私のようなものでも、相米慎二監督のお名前は知っている。
  短き人生で、今作を含め、その後の邦画に多大なる影響を与えた事実は厳然として残るのである。立派なる人生であると思います。-

◆感想

・今作は、重いテーマだと見せつつ、愚かしくも愛すべき男性佐藤浩市演じる韮崎紘や、彼の亡くなっていたと母(富司純子)に言われて育って来た、マアマア一流企業と思われる会社では働く男(佐藤浩市)の前に)自由人である父(山崎努)が現れる処から物語は始まる。
ー オロオロする、佐藤浩市演じる長男の姿に対し、母は淡々と真実を話し、男の妻(斉藤由貴)も、驚きつつもその事実に向き合って行く。-

■今作の白眉のシーンは、山崎務演じる男が、病院のベッドで事切れた際に、お腹の上で温めていた雛が生まれるシーンであろう。
 正に、死と生を見事に描いたシーンである。

<今作を鑑賞すると、多分、相米監督が意図した胆の据わった女性に対し、事実と向き合った男性のオロオロした態度が可笑しき作品である。
 多くの作品に描かれているように、男とは普段はエラソーにしているが、いざとなると女性の方が事実を正面から受け入れたり、過去の出来事をフツーの顔で隠していたり・・。
 男尊女卑思想を真っ向から否定する、故相米監督の温かき視点が秀逸であると思った作品である。>

NOBU