劇場公開日 2007年4月7日

「判事にも何か後ろめたいことがあるはずだ!・・・そう、人肉喰ってます」オール・ザ・キングスメン kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0判事にも何か後ろめたいことがあるはずだ!・・・そう、人肉喰ってます

2021年6月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 1949年にアメリカで公開された『オール・ザ・キングスメン』の脚本・監督のロバート・ロッセンは『グッドナイト&グッドラック』でもお馴染みのハリウッドの“赤狩り”の犠牲になった人だ。オリジナル作品は民主主義であるはずのアメリカ暗部を描いていたため、日本でも公開されたのが70年代に入ってからとなった。今リメイク作では時代も人物設定も同じではあるものの、多少オブラートに包まれたかのようにウィリー・スターク知事(ショーン・ペン)の独裁者ぶりはおとなしくなっていたように感じました。しかし、その政治的・社会的なメッセージは重く、質を落とすことなく見応えのある映画となっています。

 オリジナルでは新聞記者ジャック・バーデンと元恋人アンの心理描写はそれほど克明ではなかったので、今回の鑑賞によってそれぞれの登場人物の関係が掴みやすくなってたのは良かった点です。一方、腐敗政治・独裁的知事の悪魔ぷりはそれほどでもなく、ショーン・ペンのヒトラー然とした鬼気迫る演説シーンが印象に残るだけでした。圧倒的な民衆の支持を得て、貧乏人のための政治を強調する演説。最初は歓迎すべき政治家だと感じるのですが、徐々に権力にしがみつく醜さが浮き彫りにされる展開には震えさえ起こるほどです。

 『ホリデイ』では兄妹の関係。この映画では元恋人同士のジュード・ロウとケイト・ウィンスレット。何が二人を深い関係から遠ざけてしまったのかは複雑なのでしょうけど、「やっておけばよかった」と後悔するジュード・ロウの姿には共感を覚えてしまいます。そしてケイト・ウィンスレットの兄役であるアダム(マーク・ラファロ)の旧友への想いや政治家への憎悪などはとてもわかりやすく描かれていました。

 今リメイク作ではショーン・ペンが主演となっているけど、旧友・恋人・判事(アンソニー・ホプキンス)に対する複雑な思いや政治に対する冷静な心理描写を考えると、むしろジュード・ロウが主演であるような気がします。ショーン・ペンは映画での活躍よりも、数々のブッシュ批判コメントのほうの活躍が目立ちます。もっと吼えて暴れてほしいと願うのは不謹慎でしょうか・・・

【2007年4月映画館にて】

kossy