劇場公開日 2006年12月9日

硫黄島からの手紙 : インタビュー

2006年12月15日更新

「父親たちの星条旗」で偶像の英雄として祭り上げられる3人の若きアメリカ兵士の中でも、ひときわ哀切を漂わせる末路をたどることになるネイティブ・アメリカンのアイラ・ヘイズ。演じるアダム・ビーチにインタビューした。(聞き手:佐藤睦雄)

米軍にとって硫黄島攻略は絶対必須だった
米軍にとって硫黄島攻略は絶対必須だった

「父親たちの星条旗」アイラ・ヘイズ役
アダム・ビーチ インタビュー
「大好きな祖母が亡くなって大泣きして、アイラと少しつながった気がした」

「父親たちの星条旗」は、 「星条旗を掲げた者たちが書いた」物語
「父親たちの星条旗」は、 「星条旗を掲げた者たちが書いた」物語

──最初にささやくように歌っているのは、クリント・イーストウッド監督本人ですよね?

「そうだね。思うに、嘆きをうながすような歌詞だったね。イーストウッド監督じゃないので、うまく歌えないけど(笑)。その中味は監督本人に訊かないと!」

──ほとんどのシーンはワンテイクだったのですか?

「ホテルで泣いているシーンは3テイク撮らせてもらいました。星条旗を掲揚するシーンは4回、5回やったかな、憶えていないよ。でも、ほとんどはワンテイクだった!

──あれだけの演技をワンテークで発現してしまうのは神業に近いのですが、ライアン・フィリップ(ジョー・ブラッドリー役)やジェシー・ブラッドフォード(レイニー・ギャグノン役)とリハーサルは一切しなかったのですか?

「いや、個々に演技に集中するだけで、リハーサルは一切やらなかった。やっぱり1回目は純粋に、最高のものが出るんだろうね。
ともかくクリントは、僕らを信頼し切ってくれた。

──その撮影シーンですが、「Let's start now?」(そろそろ始めようか)みたいにイーストウッド監督が“ささやいて”始まるのですか?

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「ああ、けっして「Action!」(アクション)とは言わないね。「Ready are newer」(新しいの準備はいいか)とか、「Go ahead」(いくぞ)とか、「Let's start now」とか。終わりも「O-Kay」(よし)「All right」(いいぞ)とか、いろいろ言うパターンがあるね」

──イーストウッド監督のひとことで、アダム・ビーチさんの心はどんなふうに準備されたのですか?

「その言葉自体にインティマシー(親密さ)を感じたんだ。それに、映画の中から出てきたような、あの声で話してくれる! 思わずベストを尽くしてしまうし、僕の力以上のものが引き出された気がする。(我ながら)これほどうまくいくとは思わなかった(爆笑)」

──戦闘シーンがまた素晴らしいわけなんですが、“見えない敵”である日本兵と戦う恐怖心を、どのように表したんですか?

画像4

「彼らはぜんぜん見えなくて、まるでゴーストだった。まさか地下に潜って、こっちを襲ってくるなんて思わないものだ。彼らは誰も見えない。ぼくらは穴蔵にいる見えない敵に向かってライフルを向けて撃つ。当たっているか当たってないか、わからない。そんな潜って戦うことってそれまで(の戦争の歴史に)なかったことだからね。イギー(ジェイミー・ベル扮演)がいた穴蔵に入って真実を知るわけだ。2部の『硫黄島からの手紙』では、顔が見えなかった日本兵たちの個性や感情が強調されるのだろう。僕たちアメリカ兵は同じように顔が見えなくなるかもしれない。戦争ってそんなものだ。自分は戦争に行かなくて、本当に良かった」

──だから、硫黄島は遺骨が回収できませんでした。

「あそこは島全体が墓場みたいなものだからね」

──特に後半で、万感の想いを込めて演技できたシーンはありますか?

「もっとも感動したのはヒッチハイクのシーン。そのシーンの直前、大好きだった祖母が亡くなったという報せを受けて、もうこれ以上泣けないぐらい大泣きした。トレイラーにイーストウッド監督がやってきて『大丈夫か?』と声をかけてくれましたので、撮影を続けます、と返事をした。その後撮影を続けながら、つらい悲しみがこみ上げてきた。友人たちを失って、のたれ死にしていくアイラ・ヘイズの感情を思うに、彼と少しつながった気がした」

インタビュー3 ~伊原剛志インタビュー(1)

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