劇場公開日 2018年10月19日

「名作の理由」2001年宇宙の旅 supersilentさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5名作の理由

2018年2月17日
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鑑賞方法:VOD

この映画がSF映画の金字塔と言われるまでに評価されている理由には、様々なものがあげられると思うけど、例えばその一つとして、現代においても通用する圧倒的な映像美をあげることには誰も異論はないだろう。

2001年をとうの昔に過ぎてしまった今ではインテリアやコンピューターのUIこそレトロフューチャーなアナクロな印象を感じてしまうのは否めないけど、宇宙の広大さや、宇宙船や天体の造形は圧倒的な迫力を感じさせるものとなっている。

でも、この映画が今なお評価されている最大の理由は、そうした映像美にではなく、その難解さにこそあると思う。ナレーションやセリフを削ぎ落とした徹底した説明の排除。何が言いたいのかわからない。だからこそ、そこに様々な解釈の余地が生まれ、この作品に終わりのない問いを生じさせる。

セリフやキャプションで、様々な解説を与えることによって、娯楽作品として完成させることもできたかもしれない。でももしそうしていれば、これほど後世に影響を与える作品にはならなかったとも思う。

完結させないことで謎を残す。完成させないことで完成させる。人類とは何か。人間の精神とは何か。知性や意識が向かう先はどこなのか。終わりのない問いかけを自らに繰り返しながら、永遠の時間の中に放り出される。それはまさにオデッセイとしか形容できない宇宙の旅ともいえる。

映画自体はそうやすやすと面白かったと言えるようなシロモノではないけど、映画体験としてはやっぱり、レム原作のタルコフスキーのソラリスのように他に代わるもののない輝きを放っている。

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