劇場公開日 2008年8月2日

  • 予告編を見る

「映像や登場人物の死生観に見るべきものはあるが、設定と物語がわかり辛い」スカイ・クロラ The Sky Crawlers Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5映像や登場人物の死生観に見るべきものはあるが、設定と物語がわかり辛い

2013年3月16日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

難しい

総合:65点
ストーリー: 40
キャスト: 65
演出: 70
ビジュアル: 80
音楽: 80

 絵は全体に綺麗だし空中戦の動きは面白いが、CGと思われる飛行機の絵がアニメと融合しきれていない部分がある。音楽は寂しくて美しい。

 一番わからないのは物語。前知識なしで見たが、設定からしてどうなっているのかさっぱりわからない。
 イギリスかどこかの欧州の風景に日本人がたくさんいて、時々白人が出てきて彼らとは英語を喋りながら、どこか日常の社会活動の余裕でゲームのような空中戦をしている。国ではなくて会社単位での戦争らしい。第二次世界大戦に登場する日本海軍の試作戦闘機「震電」やドイツのメッサーシュミットのようなプロペラ機が登場するが、陸では戦後ずっと後に出てきたナロー・ポルシェやアメ車のコンバーチブルが走っている。登場人物らは特殊な人間で、どうやら歳をとらないらしく、基本的に戦闘でしか死なないらしい。そんなに長生きする彼らだけが何故戦闘に参加するのだろうか。
 そういうことを作品の途中で自分で読み取らなければならなくて、ちょっといくらなんでも設定の説明を省き過ぎではないだろうか。謎を残したといえば恰好がいいが、悪く言えば手抜きしただけ。

 結局戦闘をしながら日々生き延びている彼らなのだが、自分を見失っていて生きる目標もなくただ時を過ごしているような、何か感情を失いかけた刹那的な生きる半屍のような登場人物が冷めた心のまま登場する。これだけ特異な世界の設定をしてその中で戦争をしながらも、死ぬまで戦闘を続けなければならない特殊な彼らの死生観を中心に描いているのだろうか。戦闘が嫌なら会社を辞めればいいだけのような気もするのだが、それに関する説明もない。

 彷徨う彼らの冷えた魂を表す厭世的で閉塞的な雰囲気はいいし、押井監督は以前に手がけた「攻殻機動隊」でもこのような冷めた哲学的な主題を取り入れていたが、本作では雰囲気重視でとにかく設定や物語が置いてきぼりになった印象を受ける。これで俺の高尚な哲学的思想と世界観を理解しろよ、と製作者側(特に押井監督)が自己満足しているだけなのではないか。それで押井監督教の熱狂的信者が支持し、そうじゃない一般の視聴者は取り残される。
 だからわずか7億円と興行収入も伸びないし(ウィキペディアによる)、これでは製作費の回収も出来ていないのではないか。全体として駄作とは思わなかったけれど、あまり高い評価も出せない。

 三ツ矢碧役の栗山千明が、主人公に感情をぶつけたりする難しい役柄をうまくやっていた。苦悩したり怒ったりしながら喋るのはすぐにわざとらしいものになりそうだが、上手にこなしていた彼女の力量を見られた。

コメントする
Cape God