劇場公開日 1976年8月7日

「新聞記者になりたい! と思ってしまう映画。」大統領の陰謀 garuさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0新聞記者になりたい! と思ってしまう映画。

2022年2月6日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 大統領の陰謀を観て、「新聞記者ってカッコイイ!」と思った人は多いのではないだろうか。 かくいう私もその一人。 20代の頃、専門新聞の記者として働いたのは、学生時代に観たこの作品の印象が強烈だったからだ。

 あの感動から40年。 BSで放送されたのを久しぶりに鑑賞。 実際の新聞記者が全然カッコよくないことを知っている私だが、やはり、主役の二人の仕事っぷりは羨ましいほどに輝いて見えた。 やり方次第では、カッコよくない仕事でもカッコよくなるのだ。 その点は、反省せねばなるまい。

 作品の構成は、ウォーターゲート事件の調査報道の顛末を忠実に描いており、 記者二人の人物像やプライベートは一切省かれた作りになっている。 物語は、スクープを掴んだ若い記者二人の「主体性に満ちた行動」を追う形で進行する。 明確な目的へ向かって突き進む人間の姿は生理的に心地よく、観る者の意識を強力に惹きつける。 私が昔カッコイイ! と感じたのは、まさにこの部分である。 二人の記者の手記を元にして作られたということだが、ドキュメンタリータッチといってもいい脚本、そして監督の演出ともに、見事な出来栄えだ。

 社会派ドラマの堅苦しさを感じないのは、前線で取材をする二人の記者が、ことさらに正義を主張したりしないからだろう。 二人は、ただひたすら仕事に没頭する若者という印象だ。 権力の腐敗を暴くジャーナリズムの使命感を象徴するのは、彼らをバックアップする編集主幹の上司。 「責任は俺が負う。お前らは何も心配せず思い切ってやれ!」と劇中で言ったわけではないが、まさにそんな理想の上司なのである。 この編集主幹役を演じたジェイソン・ロバーズは、アカデミー助演男優賞を受賞した。 演技の良さだけでなく、アメリカにおけるジャーナリズムの地位と価値が反映された評価という気がする。

 アメリカは、多くの複雑で深刻な問題を抱えた国だが、自由と正義を守ろうとする意識も強く、善と悪を拮抗させるそのバランス力こそが国力の源泉なのではないかと思う。 だからこそ、こういう躍動感に満ちた作品が生まれるに違いない。

私も、そんなアメリカで新聞記者になっていたら、もっとカッコよくなっていたかもしれない。

いや、訂正する。

それはないだろう。

コメントする
Garu