劇場公開日 1959年

「浮気して、昔過ぎる名作を観賞です。クーラーくらい用意したれよ!」十二人の怒れる男 野球十兵衛、さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0浮気して、昔過ぎる名作を観賞です。クーラーくらい用意したれよ!

2024年3月24日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

興奮

知的

幸せ

前回に引き続き、この作品も、最初から“コレ!”と決めていたのではなかったのですね。
アマプラで偶然に見つけた『白鯨』を観ようと思って鑑賞スタートさせたのですが。
直後にAmazonからの「最近追加されたおすすめ作品」メールの中にこちらがありまして。
以前から、名作の誉れ高い作品とは聞いていたので、かなり興味をもって鑑賞スタートです。
エイハブ船長ごめんなさい。そして『ザリガニの鳴くところ』いつ観るねん!

この作品、議論が白熱するにつれ、発汗の量が尋常じゃなくなってくるんですよね。額も、シャツを濡らせる脇汗も。
クーラーくらい付けたれよ。せめて扇風機のスイッチの扱い方くらい教えといたれよ。と、ずーっと思いながら観ていましたね。
まだ肌寒い春先というのに、観ているこちら側まで暑くなってきましたよ。そして議論と同時にこちらのハートまでもが熱く。
?だったのが、観たのは吹き替え版だったのに、時々オリジナルの音声が入ってくること。why何故に?
観ていて思ったのは、それぞれのキャラクターのバックボーンが、見えてくるということ。
「この人の為人はこういう感じなんだなぁ」もっと言えば「こんな人生を歩んできたんだろうなぁ」というふうに想像が膨らみました。
お話の中では明確に語られることはありませんでしたけれど、シナリオと演技が何よりもそれを雄弁に語っていたように思えました。
お気に入りのキャラクターは主人公の隣に座っていた9番のお爺さん。突破口を開く鋭い観察力の持ち主の紳士だったので。
調べてみて「えつ!」と思ったのは、本作ってそれぞれのキャラクターに名前がないのですね。全ては陪審員〇番なのですね。普通なら名前のないキャラクターには感情移入しにくいと思うのですが。
本作は、あえてそうすることでリアリズムと臨場感を際立たせる手法の設定だと思いました。
劇伴が全くないことが、緊張感に一層輪をかけていたのは明らかだと思います。
てか、そもそもも現実の陪審員裁判って、「はっ!あんなふうにお互いの名前は明かさないのかな?」と思いつき。←えつ?勘違い?
職業とかの個人情報はダダ漏れでしたけれど。
陪審員裁判いついて、軽~く調べてみると、驚くべき情報が!
人の一生の中で、陪審員に選ばれるのって、約120人に1人なんだって。割と高確率。選ばれても私には耐えきれない重責。8番の人みたいな冷静で聡明な判断なんてムリ。ゼッタイ。
最後の最後に8番・主人公と、9番・お爺さんの名がお互いに明かされ。
雨の上がった屋外へ出た男たちが、やっとのことで重責を全うし、安堵と共に解放されていった晴れ晴れとしたラストシーンが素敵でした。優しく、爽やかなハッピーエンドを飾るに相応しい劇判もやっと流れてきて。
てか、紳士って真夏でもスーツ着なきゃだめなんだ。紳士でなくてよかった。ネクタイの結び方すら危なっかしい私だもの。

もといです。
それぞれの人物の心理描写の交錯が大変面白かったです。そしてディスカッションの中で本来あるべき姿、やっちゃいけないことのお手本となる教科書と言っても過言ではないとも思えました。
ディスカッションは、それ自体が映画向きの題材なのではないかと思いました。
入り乱れる思惑の駆け引き、お互いの主義主張のぶつかり合い、面子という自我の愚かさetc…
そして何よりも、私が好きなワンシチュエーションドラマです。
そもそも映画製作とは、試行錯誤のディスカッションによって完成されるものだと思います。←偉そうに
そんな現場の中に、本作のアイデアの源があったのではないかと思いを巡らせました。
ディベートともなると、刺激と業が強すぎるように思えて。私はディベートは苦手です。
今どきの若い子が憧れているらしい「はい論破」こそ、議論の最も愚かな成れの果てだと思います。←偉そうに
そして、監督以下制作スタッフ知識には、とんと疎い私ですが。(本作でも、お名前を耳にしたことのあるキャストはヘンリー・フォンダくらいです)本作が三谷劇場に多大な影響を与えたであろうことは、容易に想像できました。劇判のイメージまでをも含めて。
脇汗どころか、手に汗握る攻防に画面に見入ってしまった100分弱の大変楽素晴らしい体験でした。私の理想の尺の1時間半です。
謎なのがタイトル。そこまで怒ってた男って、3番の人くらいだったのに。私は、3番への皮肉も込めて『十二人の聡明な男』って脳内で勝手に解釈してしまいました。なんか弱っちい…

あれぇ、相変わらず“まくら”を置いている点を除けば、今回は全く私らしくないスタイルのレビューだぞ?
簡潔だし。
たまには真面目に書いてみたい時だってあるんです。←それでも、結構ふざけてるよ…

野球十兵衛、