劇場公開日 2005年3月5日

ローレライ : 映画評論・批評

2005年2月15日更新

2005年3月5日より日劇2ほか全国東宝系にてロードショー

ガンダム世代がエヴァの破綻を乗り越えて

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これは、ただの戦争特撮大作ではない。誰もが死を意識した第2次世界大戦末期という状況を借り、昭和40年代生まれの原作者と監督が描きたかったのは、格好良さを追求するだけのバトル・アクションではない。死はおろか、生すら曖昧になった虚構の世代の葛藤や苦悩が語られていく。それはまるで巨大ロボット・アニメという枠の中で、現実の中に放り出され、アイデンティティを模索しながら戦い始めた少年たちの姿を思い起こさせる。

もし3発目の原爆で東京が壊滅していたら、という設定が彷彿とさせるのは、80~90年代のサブカルが拠り所とした終末的世界観。原爆投下を阻止する希望は、少女が鍵を握るシステム「ローレライ」を搭載した潜水艦に託される。リセットして灰の中から再生するか、それとも、若者の未来を犠牲にせず混沌から這い上がるか。結果的にいつの時代も終末は訪れず、ぼくらは絶望を抱え、過去を引きずりながら、生き永らえなければならない。いわばこの映画は、ニュータイプとなってしまった「ガンダム」世代が、着地点を見出せなった「エヴァ」の破綻を乗り越え、世界の終わりにけりをつけて、生きる覚悟を新たにした同時代のファンタジーだ。

清水節

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