劇場公開日 2004年11月6日

「在日コリアン社会は興味深々も、誰にも共感できず戸惑ってしまった」血と骨 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5在日コリアン社会は興味深々も、誰にも共感できず戸惑ってしまった

2021年4月25日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、VOD

自分は在日の人達、コリアン・タウン、そこでの慣習・文化に無知であり、そういう意味では大変に興味深い映画ではあった。またチンチン電車の線路には郷愁覚え、忠実?に再現された街の佇まいも魅力的で、そこの部分はたいしたものだと感心させられた。

映画全体としては、音楽の綺麗さも有り、米国でのイタリア移民社会を描いたゴッドファーザーの日本版を目指した?ただ、たけしは多分本人的には一生懸命頑張っているものの、主人公の親父は凄く金持ちになったと言え、ただの身勝手な短期な暴力親父に見え、どうしてぶち殺されないか不思議に思ってしまった。女や家族に暴力加え、家具や窓ガラスを破壊しても、小市民的で、化け物的怖さは感じられず、演出が計算違いに思えた。

根本的に、監督らが何を描きたかったかが、自分には、判然としない。多分、原作的には、自分に流れる親父的なものをしっかりと見つめた上で、どうしようも無い父親を客観的にネガティブに描くことで、それを克服しようとした物語なのだろう。しかし、映画は政治的運動等ノスタルジックな部分に興味がいってる様にも見え、混乱させられる。主人公を、もう少し、自立展望的に描いた方が分かりやすく共感が得られたのでは?

初代愛人役の中村優子さん、その後の愛人役の濱田マリは、ヌード満載の体当たり的演技で強く印象に残った。たけし親父に暴力を加えられる妻役鈴木京香や娘役田畑智子も悪くなく、女優陣は全体的に良かった。

最後の北朝鮮での死を迎える映像は、若き日海の向こうに見えた大阪の街の映像を重ね、大河ドラマ風ではあるが、大作映画の締めとしては今一つ工夫が足りないと思ってしまった。

Kazu Ann