劇場公開日 2002年6月29日

「花」青い春 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5

2023年1月19日
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しゃらくせえなと思いながらも最後まで見てしまったのは松田龍平の色気ゆえか新井浩文の危うさゆえか。俺の地元の高校もあんな感じで、窓が割れたりうるせえ野球部の先輩が来たり露骨なヒエラルキーがあったり、話を聞く限りじゃ「バカ」の一言で片付けられそうなところだったけど、こうやって蓋を開けてみれば鬱屈とした文学青年で溢れかえった進学校ともさほど変わらないのかもしれない。そこにはホモソーシャル的な友情があって、どうしようもなく個人的であるがゆえに息の詰まるような葛藤があって、そして死の予感がある。立場や経路はどうあれ多くの若者が最後に辿り着いてしまう、それが青春という名の袋小路なんだろう。ところどころに誇張があるにせよ、俺は本作をけっこうリアルな映画なんじゃないかなと思った。ただ、俺はやっぱりフィクションとはいえ若い人間が青春の蹉跌に蹴躓いてそのまま死の淵に転がり落ちてしまうのを見たくない。就職できなくても夢が実現しなくても甲子園行けなくても死んでほしくない。だから俺は校庭の花に全てを賭けていたし、それが無に帰したとき本当に落ち込んだ。映像の美しさに惑わされて言葉を慎むのはやめよう、だから敢えて言おう。俺はもっとどうにかなったんじゃないかと思う。

因果