劇場公開日 2002年8月24日

ウインドトーカーズ : 映画評論・批評

2002年8月15日更新

2002年8月24日より丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にてロードショー

映画作家ジョン・ウーの凄味を見た

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第2次世界大戦下のアメリカは、自国内に残存する人種差別というジレンマに悩まされた。たとえば、ナチスはユダヤ人差別を公然と掲げ、日本はアジアから白人優位主義(植民地主義)を追放する……という建前の下、アジア各地への侵略を遂行した。アメリカとしては対抗上、自国の民主主義の欠陥を取り繕う必要がある。実際、白人優位主義の撲滅という主張が黒人やネイティブ・アメリカンらアメリカ国内のマイノリティの間で一定の共感を得ていた以上、彼らを「アメリカ人」として召集し、アメリカ=民主主義のために戦わせることは国策上とても重要だったのだ。

「ウインドトーカーズ」は、通信兵として――彼らの言語は日本側に解読不可能な暗号だった――遥か彼方の戦地に赴くナバホ族の若者の視点から描く戦争映画である。ただし、マイノリティ(虐げられた少数者)への配慮という政治的公正さ(PC)を装いながら、あくまでも「顔」への分裂症的執着を貫く点に、映画作家としてのジョン・ウーの凄味がある。

僕たちはニコラス・ケイジの異様に狂気じみた「顔」を終始見せつけられるし、ナバホ族が日本人と同じ「顔」をしている(?)がゆえに繰り返される倒錯的な悲喜劇が映画を面白く(病的に?)していて、サスガである。

戦争映画の低調なリサイクル・ブームが続くなか、間違いなく一見に値する作品だと思う。

北小路隆志

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