劇場公開日 2001年4月28日

トラフィック : 特集

2001年4月2日更新

「トラフィック」が凄い3つの理由

文:小西未来

【その3】人脈総論

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「My personal God」――ジュリア・ロバーツはソダーバーグ監督のことをこう表現する。ジュリアといえば、プライドが高いことで知られ、ジャーナリストにもっとも嫌われているハリウッド女優の1人である(ちなみに、ヘレン・ハントもすこぶる評判が悪い)。その大女優が、一介の監督を「わたしの神様」とまで呼ぶのには理由がある。ソダーバーグが監督した「エリン・ブロコビッチ」で、ついに彼女は演技派として認められるようになったからだ。じっさい、「エリン~」での彼女は、キャリアの中でもベストの演技を見せている。同作の撮影でソダーバーグ監督を崇拝するようになったジュリアは、キャリア面でも頻繁に相談するようになり、ブラッド・ピットと共演する「ザ・メキシカン」に出演を決める前にも、アドバイスを受けていたというほどだ。

ソダーバーグ作品で輝いたのは、なにもジュリア・ロバーツだけではない。テレビ俳優のイメージをぬぐい去れなかったジョージ・クルーニーも、単なるセクシー女優と思われていたジェニファー・ロペスも、「アウト・オブ・サイト」で最高の演技を見せて脱皮に成功した。そして、「トラフィック」では、カルト的俳優だったベニチオ・デル・トロを、スターにしてしまったのである。

「いままでの俳優人生で、最高の経験だったよ」。デル・トロは、「トラフィック」の撮影を振り返って言う。ソダーバーグは、1人1人の俳優に違ったアプローチをして、最大限の力を引き出す、と。デル・トロの場合、好きなようにやらせてくれたおかげで、満足できる演技ができたのだという。

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俳優の力を信じるからといって、それは甘やかすということとは違う。たとえば、ジュリア・ロバーツに「トラフィック」に出演志願されたとき、役柄と合わないという理由で監督は断ったのである。結局このドラッグ売人の妻役は、キャサリン・ゼダ=ジョーンズに渡ったが──これがまた見事にはまっている──普通の監督なら、ジュリアほどのトップスターを得るためには多少の妥協は省みないはずだ。しかし、ソダーバーグ監督は、ミスキャストであることを見抜いたばかりか、彼女のキャリアにとってもマイナスであると判断した。こういう汚れ役をやると、せっかく持ち直した人気が落ちてしまう、とジュリアにアドバイス。さすがのジュリアも「神様」の言葉には従った。

自分の能力を引き出してもらえる監督だから、俳優のあいだでソダーバーグ監督の人気は絶大だ。ジュリア・ロバーツやジョージ・クルーニーなど過去に出演した俳優はもちろんのこと、ブラッド・ピットやマット・デイモンまでも出演を熱望している。

現在、この豪華キャストで「オーシャンズ11」を撮影中だが、その次には「惑星ソラリス」のリメイクが待っている。この作品のプロデュースを担当するのは、自称「キング・オブ・ザ・ワールド」のジェームズ・キャメロン監督だ。ソダーバーグ人脈はどんどん広がっている。

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