劇場公開日 2002年12月7日

「少数派の存在意義。」マイノリティ・リポート とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0少数派の存在意義。

2020年5月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

怖い

興奮

萌える

凶悪犯罪のみならず、犯罪が事前に防げたら…。
多分、人類の夢。私もそうあって欲しい。
 そのために研究され、開発される数々のシステム、方法、法律。
 テロ等準備を阻止するためとして2017年に施行された改正組織犯罪処罰法(かなり強引な採決だった)。
 顔認証システム。昨年度、ラグビーをパブリックビューで観たとき、併設された催事で、説明を受けた。「大勢の観客の中から、空港等の雑踏の中から、この顔認証のシステムを使って、犯罪者として指名手配されている人を見つけ出せるようになるんですよ」
 素晴らしい。あのマラソン大会での悲劇が、あのコンサートでの悲劇が、他にも数々の悲劇が繰り返されないようになる。安心して生活できる世界。
 でも、反面、怖くなった。車が来ないことを確認したうえでの信号無視くらいしか法律違反はやったことがない、蚤の心臓の持ち主だが、もし”危険人物”として同定されてしまったら…。政府等に、某機関に、生活を把握・監視されているような心地悪さ。

そんな犯罪予防ができる世界の物語。
予知されたことは必ず起こることが前提。
けれど、
意思の力が何ものにも勝る。未来だって変えられる。
 それを体現したジョン。それを迫真の演技で、見せてくれるトム様に🍻(乾杯)。どんなに息子を愛し、あの時の自分を責め続け、犯人への怒りを募らせていたかをたっぷりと見せてくれていたうえでのあの決断。全身に力が入ってしまった。

冤罪を晴らす物語と思いきや…。
 一転、二転…。自分の心の闇も見据えて葛藤しつつ、でも意志の力で未来を変えたかと思ったら…。さらに罠にはまって…と、物語は飽きさせない。

かつ、こんな上から目線の政策がまかり通るような、
大儀のために人権が無視されるところとか、
管理社会への恐怖というか嫌悪感というかを見せつけつつも、
単なる問題指摘映画でなく、エンターテイメントとして成り立っているところがすごい。

目を見張るような機器類を駆使する、輝かしいと思いたい未来を、
監督は、わざと汚らしい映像で描いたと聞く。
多数派がまかり通り、少数派が抹殺される世界。
それでも、
絶対正義を具現するような、全市民の生活に影響を及ぼす巨大なシステムでも、ある出来事で全崩壊していく。
 そう、
 絶対正義なんてない。
 正義のために許される悪事なんてない。踏みにじられる人権なんてあってはいけない。
 気心知れた人たちとの穏やかな生活こそが尊い。
 そんな幾つものメッセージを読み取ってしまう。

初見時は、人権無視とか後味が悪くて、今一つ好きになれなかったが、
今は、その後味の悪さこそがこの映画のメッセージ?かと思う。
時代とともに、何度も見返す度に、見方や感想が変わっていく。
予知はともかく、いろいろな面でこの映画が描いた未来が現実になっていく今、
もう一度見直した方がよさそうだ。

(原作未読)

とみいじょん