劇場公開日 2007年3月11日

「キューザック?」ヒストリー・オブ・バイオレンス kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0キューザック?

2018年12月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 お前はジョーイ・キューザックだ!姉はジョーン・キューザックだろ?弟はジョン・キューザックじゃないのか?妹はスージー・キューザックに違いない!ちなみにキューザック俳優一家の名前を探してもジョーイもリッチーも見当たらなかった。

 目をつぶされた男エド・ハリスの眼光は鋭く、ジョーイと呼ばれたトムを威嚇する。しかし、その場で暴力沙汰を起こすわけでもなく、そこらのチンピラと違いマフィアの貫禄を見せ付けるのです。「うわぁ~俺ってジョーイだっけ?」とたじろぐヴィゴ・モーテンセンの表情にはもはやLOTRのアラゴルンの面影はない。田舎のダイナー店主をやっている一般庶民がたまたまヒーローになっただけの男を装うのだ・・・

 それにしても、冒頭のモーテル従業員惨殺シーンから引き込まれ、その二人組がダイナーを襲い、トム・ストールの家族を巻き込むまで・・・緊張の連続でした。合間にはごくノーマル(?)なチアガールコスプレシーンで和まされ、イジメに遭う息子への非暴力の教育など考えさせるところが多かった。そして、クローネンバーグらしくグロい映像で圧倒され、見事な心理戦によって体が硬直してしまいそうになったほどです。

 エド・ハリスが執拗にヴィゴ・モーテンセンや家族の前に姿を現すところでは、『野性の証明』を思い出しました。今では平凡な市民を装っているが、かつては凄腕の殺人鬼だったことを証明するかのように、「おらおら、暴力振るってみぃ!」とでも言いたげな嫌がらせを繰り返すのです。と考えると、ラストの殴りこみ(ちょっと違うけど)などにも共通点がありました。

 このまま人違いであってほしいと願っても非情なまでの展開になってゆく。あぁ、やっぱりタイトル通りだったんだと諦めつつも、ラストの異様なシーンによって涼しくなってしまうような後味の作品に驚きました。最後に娘が「お父さ~ん」と叫んでもよかったかな・・・

kossy