劇場公開日 2006年9月2日

グエムル 漢江の怪物 : インタビュー

2006年9月1日更新

「殺人の追憶」(03)の成功により韓国で最も重要な映画作家となったポン・ジュノ監督が、韓国映画史上最高の製作費約12億円を投じて作り上げた、本年度最高のパニック・エンタテインメント「グエムル/漢江の怪物」。公開前にキャンペーンのために来日したジュノ監督に話を聞いた。(聞き手:編集部)

ポン・ジュノ監督インタビュー
「描きたかったのは、怪物の登場によって起こる人々の反応なのです」

“韓国のスピルバーグ”とも言われる ポン・ジュノ監督
“韓国のスピルバーグ”とも言われる ポン・ジュノ監督

――“韓国の黒澤明”と呼ばれていますが、それについてどう思いますか?

「とても光栄なことで私は嬉しいのですが、黒澤監督の家族は怒っているんじゃないですか(笑)? 先日、ソウルで『天国と地獄』をシネマスコープの大画面で観たのですが、黒澤監督の映画を観るのはやはり大画面に限りますね」

――黒澤明監督の「隠し砦の三悪人」「用心棒」「天国と地獄」「赤ひげ」といった中期の傑作はシネマスコープで撮られていましたが、ポン・ジュノ監督はいままですべてビスタビジョンですね。

「そうですね。私はもともと1:1.85のビスタサイズが好きなんです。なぜかというと、演技をしている俳優さんを尊重できる気がするからです。特にこの『グエムル』のような作品では、空間の中の人の表情が重要になってきます。今回は(韓国映画では超大作の部類に入るので)さすがに、周りからシネスコを勧められて、ちょっと考えてみたのですが、全体を見渡したら、やはりビスタの方がいいと思いました。確かにグエムルという怪物が出てきますが、この映画はあくまでも家族の物語、人物中心の物語ですので。普通に考えたら、こういった大作ではシネスコの方がいいと思われがちです。ですが、黒澤監督の『乱』もビスタサイズで、映像を見て圧倒されました。そういった迫力を出すのは、必ずしもシネスコの横長の画面の大きさだけではないということがわかりました」

ともに妻のいないカンドゥ(左)とヒボン(右)だが…
ともに妻のいないカンドゥ(左)とヒボン(右)だが…

――画面にもっと何かを入れたいという欲求がありませんか?

「どちらかというと逆で、『これを外したい。あれも除きたい』という欲求の方が多いですね。できるだけ人物に近づきたいという欲求の方が大きいです。スペクタクルな映像よりも、人物に興味があるのだと思います」

――パク一家の性格付けは、どのようにしたのでしょうか?

孫娘のヒョンソ(右)が母親的な強さをみせる
孫娘のヒョンソ(右)が母親的な強さをみせる

「最も情けない家族にしようと思いました。グエムルと一番戦えそうにない、戦うという行為が似合わない駄目な家族にしようと。それこそがこの映画のドラマの核心部分だと思いました。普通、怪獣映画だと、軍人や天才科学者などのスーパーヒーローが出てくると思うのですが、この映画はそうではありません。そんな風に色々と家族構成を考えていたら、2世代に渡って母親が不在ということに気がつきました。ヒョン・ヒボンにも、ソン・ガンホにも妻がいません。なぜ母親を登場させなかったのかというと、私の考えでは、母親は賢く現実的で、家庭の中でとても強靱な存在なんです。だから母親がいると、駄目なはずの家族が、情けない家族に見えなくなると思ったのです。パク一家が駄目な家族に見えるからこそ、この映画ではその設定が生きると思ったのです。ですが、あれほどまでに情けないパク一家が、命を賭けて助けようとしたヒョンソに、実は母親的な要素があったのです。劇中でグエムルによって閉じこめられていたときに、ヒョンソは自分より小さな男の子を守ろうと必死でした」

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インタビュー2 ~ポン・ジュノ監督インタビュー(2)
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