劇場公開日 2002年8月2日

フリーダ : インタビュー

2003年7月30日更新

サルマ・ハエック インタビュー

町山智浩

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サルマは幼い頃フリーダの絵が大嫌いだったという。

「ゲーッ、これ描いた人頭ヘンじゃない?って感じ。まだ子供だったのよ。でも、大人になっていくに従って、彼女の痛みがだんだんわかってきて夢中になったわ。フリーダの作品と人生にね」

フリーダは幼い頃、ポリオで足に障害を持ったうえに、交通事故で体を文字通り引き裂かれ、さらに流産も体験した。夫のディエゴ・リベラは浮気を続け、その相手にはフリーダの妹も含まれていた。

「彼女の一生は苦痛の連続だったけど、その痛みを隠すことなく絵のなかに表現したの。彼女の愛のキャパシティは時代のはるか先を行っていたわ。当時だけでなく今もね」

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フリーダはサルマのように小さかった。

「夫のディエゴはあらゆる意味で巨大だったの。体も2メートル近くあったし、描く壁画も巨大で、古代のメキシコから現代までを世界史と政治を絡めて描くという壮大なテーマだった。それに対してフリーダは小さかった。常に自分のことしか描かなかった。だから生きているうちにはディエゴほど評価されてなかったけど、今では逆転してるわね」

ディエゴの描く共産主義思想は滅びてしまったが、フリーダの描いた心の痛み、実践した自由な生き方は古びていないどころか今だに時代は追いついていない。

「フリーダはハリウッドやファッション業界が提供してきた“美しさ”とは違う美しさを持っていた。つながり眉毛に口ひげ、それに体の障害にもかかわらずセクシーで、あらゆる人々を魅了したの」

夫に負けず、フリーダも恋多き女だった。彫刻家のイサム・ノグチ、ソビエト革命の指導者トロツキーなど世界的有名人と次々と関係を持った。しかもフリーダの恋の相手は男性だけではなかった。

「私はフリーダのUnconditional(無条件)な恋を描きたいの」

そこで筆者はよせばいいのに「レズビアンも、ということ?」と口走ってしまった。

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「私はフリーダとディエゴの夫婦愛のことを言ってるのよ! フリーダといえばあたしがレズ・シーンを演じるかどうか、そんなことばかり気にしてるスケベ親父が多くて困るわ! あのねえ、フリーダはね、人生を思いきり生きただけなの! 植木に水をやるように楽しんだのよ。Painting(絵画)とFuckをね!」

“Fuck”という言葉をハリウッド女優から直接言われたのは始めてだ。

「フリーダは障害にもめげずに、毎日お祭りみたいな派手なドレスを着て世界の社交界に飛び出して、言いたいことを言ったのよ。あまりにキツくて嫌われることも多かったけどね」

それはサルマ自身のことを言ってるようにも聞こえる。役作りなのか、もともとそうなのか。とにかスタジオのサルマは身長150センチでも存在感は150メートル以上ありました。

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