劇場公開日 2004年8月14日

「ブッシュの顔」華氏911 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ブッシュの顔

2018年11月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 『ボウリング・フォー・コロンバイン』を観た時ほどの衝撃度は無かったが、マスコミで宣伝しているほどブッシュ批判に徹しているとも思えず、むしろ後半の反戦色を全面に出した、考えさせらるドキュメンタリー映画としての印象が強い。

 前半はブッシュ親子のダーク・サイド、すなわち大統領選挙の不透明な部分やビン・ラディン一族との関係、といったブッシュ批判に終始しているのだが、単なる共和党に対する政治批判に利用されるためだけのプロパガンダのような内容。また、これを逆手に取って共和党側でも選挙利用されてもおかしくないほど政治的戦略が見え隠れする。

 しかし、後半のイラク戦争が中心となった展開は、政治イデオロギーを超えた戦争の無意味さと本土決戦を経験していないアメリカの贖罪さえもうかがえるのだ。それは対照的な描写(同時多発テロの場面は映像がなくなり、イラン戦争では悲惨な光景を映す)によってわかるように、テロによる被災者意識を軽減してイラク戦争にのみ焦点を当てているからだ。そして、兵役に駆り出されるのはいつも貧困層や黒人なのだという事実や、「戦争が何故起こるのか?」といったテーマについて観客にヒントを与えてくれるのです。

 日本人の一人としてこの映画を観るときには、対岸の火事のようにとらえることによって「ブッシュは馬鹿だ」とか「米民主党に勝利を」などと短絡的に考えるのではなく、日本における政治・戦争の問題を真剣に見つめなおすことが重要だと思う。

kossy