劇場公開日 2002年2月2日

地獄の黙示録 特別完全版 : 映画評論・批評

2002年1月15日更新

2002年2月2日より日本劇場ほか全国東宝洋画系にてロードショー

“アメリカの戦争の実相”を描く新たな映画に変貌

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20年前、僕らが見た「地獄の黙示録」は、不思議な映画だった。ベトナム戦争中、ウィラード大尉(マーティン・シーン)が秘密任務を受け、軍の命令にそむきジャングルの奥地で血と暴力の王国を築いているカーツ大佐(マーロン・ブランド)暗殺に向かう物語だが、川をさかのぼることが、文明をさかのぼることに通じ、戦争映画であるよりもむしろ、抽象化されたひとつの“文明論”だった。

ところが、新たに「特別完全版」として53分もの未公開映像を加えて蘇った作品は、難解さはうせ、狂気をキーワードに、ベトナム戦争の真の姿そのものを映し出した映画に変貌した。キューブリックの「フルメタル・ジャケット」と並ぶ、傑出した“戦争論”映画が誕生し、しかも、アメリカの戦争の実相を普遍化した作品に仕上がっているから、アフガニスタンで実際に“戦争”が起きている今こそ、その価値が実感できるはずだ。

なお、この作品を深く味わいたい方には、レンタル・ビデオでオリジナルの「地獄の黙示録」や、そのドキュメント「ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録」を見て、エレノア・コッポラの「『地獄の黙示録』撮影全記録」(小学館文庫)を読むことをお薦めしたい。

高橋良平

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