劇場公開日 2017年3月11日

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「影の魔術師」クー嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 こまめぞうさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5影の魔術師

2023年7月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

難しい

光の魔術師という褒め言葉があるが、この作品ではむしろ陰の魔術師。
夜間学校なので南国台湾でありながらも
煙った柔らかな日差しの光で引きでの画も
特徴ではあるのだけど、
盗んだ懐中電灯で襲撃時に照らされる
限られた部分の切り取り方が秀逸。

魔性の女が微妙な感じの容姿なのは少し残念だが、
憐れを誘う境遇や佇まいである点も上手い。
実はタチが悪いのはわかりやすいビッチでなく
こういうタイプなのだ・・・ハマったら抜け出せない系。

魔性のヒロインも主人公も常にあるのは
どこに行っても自分は馴染めてない異邦人感だろう。
思春期は自分は浮いてると思いがちではあるが、
この作品の場合は実際に情勢背景の面からも
彼らは浮いてるのである。
大人達はそこをどうにか折り合いをつけていこうと
試みたり妥協してみたりできるが、
子供たちはどうか。

新天地を求めて台湾へ来たら世界が変わる、と
必死でやって来たのに努力はいつ実るのか。
鬱屈した思いをヒロインは吐露する。
女は諦めてそんな中でも己の生き残る道を
図太く探る方向へ目を向けるのだが、
男は己の理想から目を離せずに現実との齟齬に
苦しんで爆発してしまう。

単に実際にあった事件を元にしただけでなく
台湾が内包している問題もリンクさせた
複雑で面白い作品だった。
しかし長い・・・・・・せめてあと1時間短くならないか。

こまめぞう