「映画の奇跡を映画で撮る映画」瞳をとじて あげ玉さんの映画レビュー(感想・評価)
映画の奇跡を映画で撮る映画
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ビクトル・エリセらしい、非常に重層的な映画。劇中劇から始まり、劇中劇を観る主人公たち(あるいは劇中劇から観られる主人公たち)で幕を閉じる。また、監督の過去作との連環も多く、自伝的でもある。シネフィルが作った映画愛を映す映画であり、映画そのものがテーマにもなっている。
冒頭とエンドロールでヤヌス像が映されるように、時間についての映画でもある。そしてそれも、映画内のミゲルの過ぎ去った時間、フリオやミゲルの息子の止まった時間、現実として過ぎ去った時間(アナ・トレントの50年)が入り交じるような重層的な時間である。
丹念に映し続けたまなざしが、劇場内で怒濤のように複雑に交錯し、瞳がとじられた刹那、劇中劇が終わりこの映画も終わる。これほど見事なエンディングは観たことがないし、確かに映画を観たという叫びたくなるような気持ちになったこともかつてなかった。
これが映画なのか。なんと素晴らしい。
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