劇場公開日 2007年3月3日

蒼き狼 地果て海尽きるまで : インタビュー

2007年3月2日更新

05年「男たちの大和/YAMATO」で見事復活を果たし、日本映画界に再びその名を轟かせた角川春樹プロデューサー。その角川氏が構想27年、総製作費30億円という巨費を投じて完成させた復帰第2作の歴史大作「蒼き狼 地果て海尽きるまで」が間もなく公開される。世界最大の帝国を築いたチンギス・ハーンの半生を描いた同作について、角川氏本人に話を聞いた。(聞き手:編集部)

角川春樹プロデューサー インタビュー
「これは、俺自身の前世のリメイクだよ」

――東映で「男たちの大和/YAMATO」、松竹で「蒼き狼 地果て海尽きるまで」、そして東宝で「椿三十郎」「用心棒」と、復活以降は怒濤の勢いで日本映画界を席巻していますね。

角川春樹プロデューサー
角川春樹プロデューサー

「刑務所にいたときも、そして今でもよく思うことなんだけれど、運命っていうのは変えられないんじゃないかなって思うんだよ。自分自身の魂が角川春樹という男をプレイヤーとして動かしている。つまりはコマンドが角川春樹で、もう1人の名前の違う本体、仮にスサノオノミコトとするが、そのスサノオという魂が私、角川春樹を動かしている。コマンドは自分自身であると同時に、プレイヤーのスサノオも自分自身なんだよね。

自分が意図したわけでもないのに、刑務所にいる。これはコマンドとして刑務所にいるわけだよ。で、出てきて復活する。コマンド角川春樹が復活しているわけだよね。だけど、プレイヤーであるスサノオという存在は、そのゲームを楽しんでいるだけなんだ。しかしスサノオという存在も宇宙からみると宇宙の大プレイヤーがいて、その宇宙の大プレイヤーがスサノオという魂をコマンドとして動かしている。だからこのコマンド角川春樹の復活は意図的に復活したとはいえないような気がしてね。

で、リベンジが成功したあとで、次にこの『蒼き狼 地果て海尽きるまで』を作ったわけだが、これはどうなるか分からない。ただ、442スクリーンという日本映画史上始まって以来のスクリーン数で、宣伝費9億円もまた日本映画始まって以来の大きさ。この映画の劇中で“コイテンの戦い”というのがあって、ジャムカというライバルと雌雄を決し、まさにモンゴルという国を統一する戦いなんだけれど、この戦いこそが、この『蒼き狼 地果て海尽きるまで』という映画の戦いなんだよ。日本でいうところの“関ヶ原の戦い”だね。つまりは歴史が変わる瞬間なんだよ。

「蒼き狼」で邦画史上最大の“賭け”に打って出る
「蒼き狼」で邦画史上最大の“賭け”に打って出る

映画というものは、失敗すると思って作る人間は1人もいない。しかし大半は失敗する。だけど私の場合は打率9割という映画史上最高の打率がある。しかし1割は失敗している。この1割の失敗が致命的かどうかということだよね。今まではその1割の失敗は致命的にならなかったわけだよ。だけど『蒼き狼 地果て海尽きるまで』は致命的になるかもしれない、自分にとっての賭けなんだ。映画はどんなに計算したって最後は賭けなんだよ。“コイテンの戦い”として、この映画を作ることによって、角川春樹がこの戦いに勝って、本当にチンギス・ハーンになるのか、敗れてジャムカになってしまうのか、その勝負が今回の映画だと思うんだよ」

――なぜ題材はチンギス・ハーンだったのでしょうか?

「それは、ある時“自分自身がチンギス・ハーンなんだ”ということに確信を持ったからなんだが、チンギス・ハーンの時代と現代では状況が全く違っていて、時代の要請で戦いの仕方が全く異なってくる。チンギス・ハーンの魅力というのは、その凄まじい人間力と構想力、遠方まで見ることの出来るような視野の広さにあるわけだ。で、これは現代ではどういうところに活かせることが出来るのかというと、この時代では“文化”ではないかと思ったんだ。『文化をもって世界を制する』これが現代のチンギス・ハーンのあり方ではないかと考えたわけだ。娘に、この映画について聞かれたときに、私はこう答えたんだ。“これは、俺自身の前世のリメイクだよ”と」

インタビュー2 ~角川春樹プロデューサー インタビュー(2)
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