劇場公開日 2024年2月9日

「「言葉を発する」ことの演出と演技に拍手!」一月の声に歓びを刻め flushingmainstさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0「言葉を発する」ことの演出と演技に拍手!

2024年3月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

過去に起きた事件を描くのに、回想やフラッシュバックではなく主人公たちの言葉で…いや、主人公たちが言葉を発することで描いていくという監督の挑戦に恐れ入った。往々にして俳優にその力量を求めて陳腐な表現を見せられることが多かった。
しかし、この作品のカルーセル麻紀さんと前田敦子さんが心情を言葉に発する場面は、鳥肌ものだった。彼女たちの内面の痛みを目の当たりにしてスクリーンに釘付けになり、こちらも今にも手や胸がワナワナと震えそうになった。二人とも本当に素晴らしかった!後世に残る場面だと思う。
その言葉で一つだけ気になったのは、八丈島の章。主人公の父がその重要な言葉の中に、何年か前に一時期だけ世間を風靡したお笑い芸人のフレーズを口ずさむのであるが…人の普遍的な心情を丁寧に描いた作品の中にあってそこだけどうにも違和感だけが残った。
あれは脚本の中にあるのか…それとも俳優さんのアドリブなのか。
いずれにせよ、監督は割愛しなかったという事ではあるけど。
勿論それによってこの作品の価値がいささかも損なわれるものではないけれど。

flushingmainst