劇場公開日 2024年4月19日

「4人の演者たちが奏でる温もりのアンサンブルに酔いしれる」異人たち 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.04人の演者たちが奏でる温もりのアンサンブルに酔いしれる

2024年4月27日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

実によくできた翻案である。山田太一の生んだ原作小説の本質が、英国の風景、文化、人々の物語として再構築されることで、より明確な光の筋となって我々の心に差し込んでくる。改めて気づかされる本作の魅力は、境界線のなさだ。ロンドン市街地から電車に揺られ、近郊の住宅街に建つ生家を訪れると、死んだはずの両親が「さあ、入りなよ」と出迎えてくれる。主人公もまた、いっさい驚きや躊躇いの表情を浮かべることなく、そこにスッと入り込んでいくーーー。亡くなって30年以上経つ両親と、かくも大人どうしの姿で再会し、掛け替えのない親友のように過ごすこのひととき。かつて口にできなかったこと、その時の胸の内を吐露しあう演者たちのアンサンブルが素晴らしく、セクシュアリティというテーマの絡め方も秀逸。無駄な要素を削ぎ落とした美しい映像、シンプルな移動、舞台設定、語り口が、忘れがたく温もりに満ちた幻想譚を見事な感度で成立させている。

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牛津厚信