劇場公開日 2024年4月19日

「孤立する主人公に訪れる衝撃的な幕切れ」異人たち 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0孤立する主人公に訪れる衝撃的な幕切れ

2024年4月19日
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鑑賞方法:試写会

泣ける

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怖い

山田太一の原作を大林宣彦監督が映画化した『異人たちとの夏』を、クィア映画の傑作『WEEKEND ウィークエンド』で知られるアンドリュー・ヘイがリメイク。すると、オリジナルの味わいがどう変化しているのか?

期待を胸に鑑賞した本作には、子供の頃に死別した両親との再会によって主人公が体験する、過ぎ去った時間への思い、できなかった告白、やがて訪れる、人は皆"異人"なのだという冷めた結論、等々、大林作品と共通する部分とそうではない部分が上手く配分されていた。

最も大きなアレンジは、主人公のアダムをロンドン郊外に住むゲイの脚本家に置き換えたこと。同世代(40代)の男たちの多くがさらに郊外に戸建住宅を構えて家族と暮らしているのに対して、アダムは高層マンションの1室で誰とも交わらずに暮らしている。隣人でゲイの青年、ハリー以外は。そうやって主人公の孤立感を意図的に際立たせることによって、密閉された空間と時間の中で起きるスピリチュアルな物語が微妙なリアリティを帯びてくるのだ。孤立、死、セクシュアリティ、ストレンジャーというワードが一つになるラストで、筆者は涙を堪えるのに苦労した。

愛した人はすでに側にいず、気がつくと、誰も真剣に愛せなくなった男に訪れる衝撃的な幕切れに、あなたは何を感じるだろうか?

清藤秀人