一龍斎貞友 : ウィキペディア(Wikipedia)

一龍斎 貞友(いちりゅうさい ていゆう、1958年6月20日 - )は、日本の講談師、声優である。師匠は講談師で人間国宝の一龍斎貞水。大阪府大阪市出身。旧芸名:鈴木 三枝(すずき みえ、1981年 - 1985年)、鈴木 みえ(読みは前の芸名と同じ、1985年 - 1998年)。声優から講談師に転向し、かつ声優業も継続して行う。

経歴

以前は太陽プロモーション、プロダクションエム・スリー、同人舎プロダクション、ウイットプロモーション、ぷろだくしょんバオバブ、センテナリアに所属していた。

未熟児で生まれ、幼少期は体が弱く家にこもって本を読むことが好きで、「本の中に埋もれて暮らせたら」と考えていたほど将来は図書館司書になりたかったという。

父が厳格な家庭に育ち、「自由になりたい」という気持ちが強く「早く親元を離れたい」と考えるようになる。小学校時代の国語の教師が芝居が好きで、授業で芝居のようなもことをしたことがきっかけだったといい、その時に「お芝居って楽しいかも」と思うようになった。

文章の音読は父の前でしており、作文、感想文は必ず書いた後父の前で発表しなくてはならず、チェックが入って手直ししてまた発表する感じだったという。

学校の教師になるという条件で、学校を受験し、合格したが、「このままでいいのかな」と疑問や限界を感じるようになって途中で中退。

両親としては小さい頃体が弱かったこともあり心配だったと思うが、あまりにも禁止事項が多すぎて自我が目覚めてきた頃には、その生活を続けていくことは無理だったと語り、学校中退した時には両親は相当失望していたという。

学校中退前に転がり込む友達にあたりをつけておいて、大阪から上京。両親は、役者を目指すことについて絶対反対だったが、その時は諦念していたようだったという。上京後、独り暮らしになってしまったが、色々なアルバイトをしていた。友人がたくさん上京していたため、精神的には大丈夫だったという。「演劇を学ぼう」と思い養成所を探し、1番の条件が月謝の安いところ見つけたススキダ演技研究所に入所。本が好きだったこと、当時の夢はラジオなどで朗読のコーナーを持つことだったことから「朗読がしたい」と思っていた。声優を目指したきっかけは特別に声優になろうと思ったわけではなかったという。ただしラジオが好きで、「ラジオで朗読の仕事ができたら」と考えて、発声の訓練を受けており、本好きなため、「朗読の仕事を」と考えていたという。

知り合いのナレーターが「声優のオーディションを受けてみないか」と声をかけてくれて、オーディションに合格し、1981年、『まいっちんぐマチコ先生』のまる子役で声優としての活動を始める。『まいっちんぐマチコ先生』の時には共演の先輩から多くのアドバイスをくれたという。

声優養成所出身ではなく、声優になろうと思っていた訳ではなかったため、当初は声優の業界用語がわからずかなり戸惑っていた。ほかの声優たちとの人間関係、一龍斎に対する評判などに気持ちが萎えてしまったこともあった。

現場では他の声優のやり方を見て勉強し、態度は大きかったようで、そのことでも色々だった。当時は、目の前の仕事をこなすことが精一杯だったことから、他に気を回す余裕がなかったという。

活動当初はアニメが多かったため、外画の現場でヘッドホンをつけるのも忘れており、デビューして何本かまとめて仕事が決まっていったため、大変だった。

それでも、声優としての活動を途絶えることなく続けることができた。しかし声優のレギュラーのオーディションのキャスティングの状況の厳しさの中で、「この仕事で自分はキャリアを積んでいけるのだろうか」という思いがあった。

新人の頃、一気に7本の番組が決まったが、7本とも終わってしまったという。女性の場合、「キャリアを積むのは難しい」と感じており、そういった状況になった時に、他人をうらやんだりしないようにするためには「まず行動してアプローチしていかなくては」と思うようになったという。

1985年、芸名を鈴木みえに変更。

1992年、6代目一龍斎貞水に入門。1993年に初舞台。

講談の世界に入ろうと思った理由は声優のオーディションのキャスティングの状況の中で「どうしたらいいのか」と考えて声優の仕事を引退しても大丈夫なように朗読、司会の勉強、社員教育インストラクターの学校にも通っており、結婚式の司会を年間200組ぐらい担当したこともある。結果的には声の仕事の魅力に勝る仕事には巡り会えず、「何か突拍子のないことを始めるよりしゃべりに関係することのほうがいいかな」と考えて周囲からは「これ以上新しいことを増やさないほうがいい」と言われていたが、「声優という仕事をリタイアしても、古典芸能なら女性でもキャリアを積んでいけるのではないか」と思い、「講談をやってみたい」と考えるようになる。元々落語が好きで、後に師匠になる一龍斎貞水の講談を聞いて感銘を受けて「立体的に語るとはこういうことなんだ、この人はすごい!」と思い、弟子入りを決めたからである。講談を始めた時は、周囲から反対されたという。

最初の5年間あまりは前座修業で、師匠の身の回りのお世話が主な仕事で、「一旦入門したからには腹を据えてやらなければ」と、必死で修業していた。自分で決めたことだったことから、「厳しいことに直面 しても引くに引けない」という覚悟があったという。

1996年、二つ目昇進。

1999年、芸名を鈴木みえから一龍斎貞友に改名。

2004年、真打昇進。昇進披露パーティーは東京ドームホテルに600人を招いて盛大に行われた。

人物

講談師になる前は滅多に顔出しはしていなかったが、『忍たま乱太郎』のイベントには他のメインキャストと参加していた。

講談師として真打に昇進した際は、『クレヨンしんちゃん』原作コミックの41巻38頁に作者である臼井儀人からの「祝・真打★貞友」というメッセージが載せられた。

講談を学んだことで声優として意識が変わったりことはあり、一つ目は講談の師匠に「お前の芸は“引いてしまう芸”だ」と指摘されたことがあった。気が小さく、「もっと押し出していけ」といわれ、はっとしていたという。

講談では声の仕事のように「声を変えるのがせこい」と言われ、習性でキャラクターで声を変えていき、2004年時点では、「“持ち味”として活かしなさい」と許しがでているという。講談を始めてからは、ナチュラル&リアリティのシーンの距離感、思いなどを伝えるのに、今まで以上に奥の深い部分を意識するようになった。

語られない深い部分を「凝縮して台詞として表現したい」と思うようになり、間尺など、色々と制約がある中でいかにリアリティを出すかということを師匠から学んだと語る。自分自身の目標をたてる時に、近い目標と遠い目標の2つを同時に立てるようにしている。

師匠の手伝いなど内弟子としての仕事があったことから、声優としての仕事はかなり抑えなければならなかった。本気で学ばなくてはならないことからカルチャーショックの連続で、我慢しなければいけなかったこともたくさんあったという。講談をするようになり、声優の仕事の大切さ、好きな気持ちを、意識できるようになったという。

『忍たま乱太郎』をはじめ、『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』など、長寿アニメのレギュラーキャラクターを担当。

2017年から川崎大師にて「三土の会」と称する独演勉強会を開始。

特技はバレエ、ピアノ、日本舞踊、大阪弁、京都弁、山形弁。

出演

太字はメインキャラクター。

テレビアニメ

劇場アニメ

OVA

Webアニメ

  • クレヨンしんちゃん外伝 おもちゃウォーズ(2016年、マサオくん
  • クレヨンしんちゃん外伝 お・お・お・のしんのすけ(2017年、オニギリ)

ゲーム

吹き替え

担当女優

映画

  • アメリカン・グラフィティ ※TBS版
  • エド・ゲイン(コレット・マーシャル〈キャロル・マンセル〉)
  • 踊る大紐育(ルーシー)※日本テレビ版
  • オレはギャング ガーディニア(ジーナ、少年、トプシー)※TBS版
  • がんばれ!ベアーズ ※テレビ朝日版
  • カントリーベアーズ(ミセス・バリントン〈ミーガン・フェイ〉)
  • サイン(ネイサン夫人〈マリオン・マッコリー〉)※フジテレビ版
  • シャドー(チルダ)※TBS版(HDリマスターDVD&HDリマスター特別版BD収録)
  • スパイダーマン(受付嬢〈オクタヴィア・スペンサー〉)
  • 大狂乱(ジープの若い女性〈ミシェリーヌ・ベルトラン〉、トッシュ・ワーナー〈アンジェリーナ・ジョリー〉)
  • 007/ダイヤモンドは永遠に(ザンパー、少年)※TBS新録版
  • タワー(サリー)
  • ネバーエンディング・ストーリー3(ジェーン〈トレイシー・エリス〉)※ソフト版
  • ハート・オブ・ウーマン(マーゴ〈ヴァレリー・ペリン〉)※日本テレビ版
  • バッド・ティーチャー(リン・デイヴィス〈フィリス・スミス〉)
  • 初体験/リッジモント・ハイ ※フジテレビ版
  • パニッシャー(トミー・フランコ〈ブライアン・ルーニー〉)
  • ハンナとその姉妹(ゲイル〈ジュリー・カブナー〉、女の子(1))※テレビ朝日版(DVD収録)
  • 北斗の拳(バット〈ダンテ・バスコ〉)
  • マスク2※日本テレビ版
  • レオン(少年)※テレビ朝日版

ドラマ

  • ER緊急救命室シリーズ
    • シーズン11 #22(ジャネル・パーカーソン〈キキ・パーマー〉)
    • シーズン15 #2(モリー〈ミランダ・メイ〉、女性警官)
  • ジム・ヘンソンのストーリーテラー(農夫の妻、王妃)
  • ドクター・フー(マーガレット・ブレイン)
  • アストリッドとラファエル 文書係の事件録 #7(カトリーヌ・ルベール)

アニメ

  • アラジンの大冒険(ラーナ)
  • カウ&チキン(カウ
  • ジョジョ・サーカス(カースプラツキ先生〈ジェイン・イーストウッド〉)
  • スヌーピーとチャーリーブラウン(シュローダー)
  • トムとジェリーの宝島(青いオウム)
  • ヘラクレス(ランチレディ、女子生徒)

特撮

  • うたう!大龍宮城(歌って踊れる野菜の声)

ラジオ

  • サンデージョッキー(NHKラジオ第一)
  • 四番 なかやま(TBSラジオ)

CD

  • 鬼のずんぼらぶー〜そこのけもののけ事件帖番外編(語り、演技指導)
  • 進研ゼミチャレンジ3年生計算カンペキマスターDX グラッセ姫を救え!くりけいかんのドキドキアドベンチャー(くりけいかん)
  • ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章(キラ、フォン)
  • 忍たま乱太郎 ドラマCDシリーズ(福富しんべヱ
  • ミスター味っ子(堺一馬)※カセット

ナレーション

  • Nスタ(TBS、2010年4月 - 2013年3月)
  • ファミ☆ピョン(TBS)
  • あさイチ(NHK総合) ※同番組の毎週木曜日のレギュラーコーナー「愛でたいnippon」(旧「“JAPA”なび」)に登場する「ぶたまん」、「あんまんちゃん」、「とりっぷさん」の声を担当
  • さまぁ〜ずの世界のすげぇにツイテッタ〜(毎日放送)
  • 厳選!いい宿ナビ(地旅ナレーション)
  • 出発!気ままに趣味旅(BSジャパン、2015年10月 - 2016年3月)
  • 異世界居酒屋〜古都アイテーリアの居酒屋のぶ〜(Webアニメ、2018年4月 - 9月)実写パート
  • 愛知発地域ドラマ“真夜中のスーパーカー”放送直前SP 「レトロなクルマに恋して!」(NHK BSプレミアム)
  • プライムニュース イブニング 2018年4月から芸能コーナー PRIMEワイド(フジテレビ)
  • 妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII (予告編ナレーション)

テレビドラマ

  • 大河ドラマ
    • 山河燃ゆ
    • 春の波涛
  • パパはニュースキャスター(鏡竜太郎のファンの声)
  • 世にも奇妙な物語20周年スペシャル・春 〜人気番組競演編〜「まる子と会える町」(お母さん〈さくらすみれ〉の声)

テレビ番組

  • おはなしの旅「牛方とやまんば」- 語り
  • 快感MAP(テレビ朝日)
  • 世界まるごとHOWマッチ(声の出演、TBS)
  • 天才てれびくんMAX(NHK教育)2009年5月21日、忍たま関連で本人が出演
  • なりきり!むーにゃん生きもの学園(NHK教育)むーにゃん(声)
  • メントレG(フジテレビ)ナビゲーター「ココちゃん」の声、「T-U」名義

その他コンテンツ

  • 進研ゼミ小学講座(くりけいかん)
  • 溜池Now(GyaO)第39 - 41回「すべらない怪談話 Vol.1 - 3」に出演
  • ハウス食品 栄養強化米 CM(2016年、人形の声)
  • 毎日香(さだきち君の母親の声)
  • エネワンでんき CM(北海道限定、ナレーション)

注釈

出典

外部リンク

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2024/04/28 06:51 UTC (変更履歴
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