永井荷風の小説原案、現代パパ活女子の青春と友情を描く「つゆのあとさき」公開決定

2024年2月5日 17:00


出会い系喫茶にて
出会い系喫茶にて

永井荷風が1931年に発表した同名小説を原案とし、舞台をコロナ禍の渋谷に置き換え、パパ活をすることになった女性の青春と友情を描く映画「つゆのあとさき」が2024年ユーロスペースで公開される。

小説は昭和初期の銀座のカフェーを舞台に、自由奔放だが逞しく生きる女給の主人公と彼女と関係を持つことになる軽薄な男たちを描き、大文豪・谷崎潤一郎に「文学史上に我が昭和時代の東京を記念すべき世相史、風俗史とでも云ふべき作品」と激賞された名作であり、「昭和初期の銀座の風俗史」ともいえる作品だ。映画は、小説の持つ普遍性を踏襲しながら、時代をコロナ禍の渋谷に置き換えパパ活で自分たちのことを体目当てにしか考えていない男たちを相手に、奔放さと逞しさを持って生き抜こうとする女性たちの生き様を描く。

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キャバクラで働いていた琴音(20)は、コロナ禍で店が休業、一緒に住んでいた男に家財を持ち逃げされ、家賃を払えなくなり、行き場を失ってしまう。そんな中、知り合った(21)の紹介で出会い系喫茶に出入りする様になり、男性客とパパ活をすることで日々を切り抜ける生活をしている。 おかしな客に絡まれたりネット上で中傷をされたりしながらも、あっけらかんと逞しく生きている琴音は、あることがきっかけで、同じ出会い系喫茶でパパ活をする大学生のさくら(20)と出会う。性格も育ちも自分とは正反対。生まじめで何事も重く受け止めてしまうさくらと琴音は不思議とウマが合い、友情を深めていくのだった。 体目当ての矢田(42)、出版社の社長でパトロンでもある清岡(36)、容姿端麗なダンサーの木村(28)ら軽薄な男たちと、生活のため、ホスト狂いのため、学費のため、各々の理由でパパ活をする女性達の対比で物語は進んでいく。

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監督は「テイクオーバーゾーン」(20)、「YEN(DIVOC−12)」(21)、「なん・なんだ」(22)の山嵜晋平。脚本は「戦争と一人の女」(12)や「さよなら歌舞伎町」(14)、「花腐し」(23)等、長年、荒井晴彦と共に脚本を作り上げてきた中野太。山嵜とは「なん・なんだ」以来のタッグとなる。主人公の琴音を演じるのはオーディション約200名の中から選ばれた新人の高橋ユキノ。友人となるさくら役には、ムロツヨシ演出・出演の舞台「muro式.がくげいかい」で注目を集めた西野凪沙。琴音の友人でホストに貢ぐためにパパ活を続ける役をABEMA「恋とオオカミには騙されない」等に出演する吉田伶香が演じる。

同作は、2月1日から始まったサンフランシスコ・インディペンデント映画祭に正式出品されている他、台湾・韓国での展開も決まっている。

▼コメント一覧

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高橋ユキノ (琴音役)
今も、渋谷の街を歩く時にふとあの夏を思い出します
物語の主人公、「琴音」はどこにでもいる日本の女の子です
今日すれ違った人の中に、彼女たちがいたかもしれません
生きるということは、理不尽なことのほうが多い
だけど
どんなに存在がちっぽけだって、森を彷徨うような現状だって、
琴音は生きていきます。
これから、この映画と出会ってくれる皆さんに心からの感謝を込めて。
多くの人に「つゆのあとさき」が届きますように。

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西野凪沙 (さくら役)
この東京の街で、日々を懸命に生き抜こうとする少女たちがいました。
誰もが抱いている閉塞感に押し潰されそうになりながらも、逞しく。
街は賑やかなのに、どうしてこんなにも独りぼっちなんだろう。
コロナ禍を経て、より大きく膨らんだこの不確かな喪失。

そんな、わたしたちを取り巻く世界に対しての希望があるとするならば、
やはりそれは人と人とがつながることで生まれるものなのだと、わたしは信じてやみません。
皆さんが観賞後にどういった感想を抱いてくださるのか。それがとても楽しみです。

最後になりましたが、山嵜監督をはじめ、主演の高橋ユキノちゃん、
そして共にこの映画を創ったすべての方々に感謝します。

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吉田伶香 (役)
役を演じさせて頂きました吉田伶香です。
私達の知る日常とはかけ離れた生活が彼女達の日常であり、世間的に見れば痛々しく自堕落な生活の中でも
日々悩み苦しみ生きている姿がありました。
今この瞬間を関わってくれている家族友達を大切に生きようと思わせられる作品になっていると思います。
誰かの苦しみに寄り添い、背中を押せたら良いなと思います。

山嵜晋平監督
永井荷風が昭和初期に書いた小説『つゆのあとさき』の背景にある時代性が、コロナ禍真っ只中の2022年と通じるものがあると思い、今の時代に舞台を移して映像化したいと強く感じました。自身の持つ「知力」「体力」「経験」「知識」、それだけでは足りず、「身体」そして「感情」さえも売り物にして、ある意味での「感情を殺して」自分と自分を切り離し生きていく女性が、絶対に生きていくという“強い意志”を、“昭和”と“令和”、時代は違えど感じてもらえれば幸いです。

今作の主役・琴音役の高橋さんを始めとした“パパ活”をする女性達役はオーディションに来ていただいた方に出演していただきました。「引かないで 受けないで 負けてはいけない 何があっても つらくても貴方たちは大事なところでは絶対に負けない 自分を強く持って」撮影中に高橋さんたちへ何度も伝えた言葉です。劇中、男性からの激しい言動を、何の防波堤を持たず受ける時に期せずして出てしまう、彼女たちの“素のリアクション”に対して、「こうあってほしい」、「気持ちを強く持ってほしい」と何度も伝えた言葉は、私が様々な境遇で生きている現実の若者達に対して常日頃、思っていることでもあり、そのまま今回の映画の根底にあるモノと考えています。

中野太(脚本)
小説『つゆのあとさき』を一読し、主人公のキャラクターに惹かれた。「生まれついての浮気者」であり「小説でみられるような恋愛」をしたことがない彼女には嫉妬の感情がなく、男女のドロドロとした情念のセックスもしない。基本的に抱く(抱かれる)男の内面に興味はなく、ただ自身の快楽だけを大切にしている。承認欲求が希薄な快楽主義者の若い女性。対して彼女と絡む男たちは嫉妬、承認欲求、支配欲の塊で、これは今の男性たちとそう変わりはない。清岡を始めとして、男たちは彼女に執着するが、彼女はそんな男たちを手玉にとって軽やかに渡り歩いていく。自分の身体は自分のもので、他者に依存しないで生きる女性。だがそこには乾いた虚無感もある。昭和6年(1931年)に発表された小説で、そのような主人公を描くことは、倫理と道徳に価値を置きたがる現在に一石投じられるのではと思った。

プロデューサーの佐藤さんからは若い女性の貧困問題もやりたいと提案され、奨学金返済で苦しむ女子大生を主人公の相手として設定して、二人の友情物語ができないかと共作の鈴木理恵とプロットを作り、主に若い女性の会話を鈴木に書いてもらい、男たちは俺が書いた。途中、山嵜も面白いアイディアを出してくれて、文字通りの共作をしながら作った。それぞれのよさが生きる脚本になったと思う。二人を演じてくれた高橋ユキノさんと西野凪沙さんの佇まいが素晴らしい。

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