小路紘史監督「辰巳」で8年ぶり凱旋、主演・遠藤雄弥「こだわり抜いたこん身の一作」【第36回東京国際映画祭】

2023年10月28日 21:00


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第36回東京国際映画祭のコンペティション「アジアの未来」部門で10月28日、日本から選出された「辰巳」が角川シネマ有楽町でワールドプレミアとして上映された。2015年の第28回の「日本映画スプラッシュ」部門で作品賞を受賞した「ケンとカズ」の小路紘史監督の最新作。「賞に恥じない2作目を作らなければいけないと、8年ぶりでたくさんの方にお待たせしてしまいましたが、最高の音響、スクリーン、満席の空間で上映され感動しています」としみじみ話した。

組織の金が奪われたことをきっかけに、内部抗争に巻き込まれた男・辰巳と親族を殺された少女・葵による復しゅう劇。撮影は19年に行われたが追加撮影、再撮影などを繰り返し「プランの練り直しもあったが、一番大きかったのは皆の絆。話し合って高められたのは、このメンバーだからこそ。映画ではあんなに殺し合っているのに、本当に仲が良かった」と振り返った。

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辰巳役で主演の遠藤雄弥も、一つのセリフのためラーメン店で8時間話し合ったことがあると明かし「店主がよく怒らなかったと思う」と苦笑。それでも、「監督が映画人生を懸けて、こだわり抜いて作ったこん身の一作。監督がとにかくリラックスした状態で芝居ができる雰囲気をつくってくれて、世界観に浸れる毎日だった」と満足げに語った。

葵役は当初は少年を想定していたが、小路監督がオーディションに来た森田想に一目ぼれして、設定を変えて抜てき。体力的にもハードな撮影だったと想像できるが、「おじさんたちに囲まれた日々で、たくさんポテトチップを買って来てくれて楽しかった記憶しかない」と笑顔。小路監督が「アクションがかかる直前までしゃべっているのに、よくすぐに役に入れるな」と感心しても、「ずっと演技していたら飽きちゃうでしょ」と大物ぶりを見せつけた。

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辰巳の兄貴分役の佐藤五郎は、「ケンとカズ」のファンだったそうで「のどから手が出るほど出たかった。夢という言葉はあまり好きではないが、腹の底から願っていたので夢がかなった」と感激の面持ち。小路監督の「普通の日本映画のやくざ像は出さないでいきたいと最初から言っていた。アジアンマフィアの方向性ですね」という言葉を受け、「スーツでオーディションに来たヤツは、皆落ちたんですよ」というエピソードを披露し、会場の笑いを誘っていた。

第36回東京国際映画祭は、11月1日まで開催される。

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