良質な残酷&胸糞ホラームービーに仕上がっていた「恐解釈 花咲か爺さん」【人間食べ食べカエルのホラー映画コラム】

2023年10月27日 20:00


「恐解釈 花咲か爺さん」
「恐解釈 花咲か爺さん」

X(Twitter)のホラー界隈で知らぬ者はいない人間食べ食べカエル氏(@TABECHAUYO)によるホラー映画コラム「人間食べ食べカエル テラー小屋」では、“人喰いツイッタラー”が、オソレゾーンで配信中のオススメ作品を厳選し、その見どころを語り尽くす!

今回は、オソレゾーンが共同配給を行う「恐解釈 花咲か爺さん」の見どころを語っていただきます。


「花咲か爺さん」を知らない人は少ないだろう。「枯れ木に花を咲かせましょう!」「ここ掘れワンワン」というキラーフレーズとともに多くの人に浸透している有名な童話だ。これは、正直爺さんと欲張り爺さんという2人の老人の物語。飼い犬のおかげで大金を得た正直爺さん一家が、欲張り爺さんの強欲さによって苦痛を味わうが、紆余曲折あって欲張り爺さんにバチが当たってめでたしめでたしという内容だ。直球の因果応報モノではあるものの、愛犬が殺害されるなど残酷な一面も印象に残る。

さて、そんな有名なお話を「恐解釈」したらどうなるだろうか。何故だか知らないが、そんな試みをしたクリエイターたちがいた。花咲か爺さん要素はそのままに、舞台は現代に置き換え、話はより残酷に、キルカウントも増やす。こうして、立派なホラー映画へと変貌を遂げた「恐解釈 花咲か爺さん」が爆誕した。

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本作のあらすじの大枠は元の話と一緒だ。原作と異なる部分としては、欲張り爺さんには2人の娘と孫がいて、ストーリーは彼女たちを中心に進むというところ。あと、欲張り爺さんは普通にシリアルキラーで、感情を無くした孫の笑顔を取り戻すために日々人を殺しては家で解体をしているという点も大きな変更点である。

劇中の大半は、欲張り爺さんら家族の日常と、それに巻き込まれた外部の人たちという組み合わせで話が進む。そこに、隣に住む正直爺さんと優しいお婆さんと愛犬がたまに出てきて、欲張り爺さんの被害に遭うという構図だ。多くの時間を割いて、欲張り爺さんが自宅で凶行を行うシーンが丁寧に描かれており、印象としては「悪魔のいけにえ」に近い。日本の片田舎がテキサスみたいな治安になっている。

悪魔のいけにえ」風といっても、実際のところ、殺人一家というわけでなく、人を殺すのは爺さんだけ。ただ、他の家族は彼の行為を止められず、死体処理などを手伝わされているのだ。傍から見れば十分共犯なのだが、あくまでそれは本意ではなく、やらされているというところが重要だ。そんな家父長制の頂点を極めたかのような辛い状況を積み重ね、欲張り爺さんへのヘイトを溜めに溜めていく。

開始1時間くらいはこの胸糞パートに費やされているが、これはいわばチャージだ。怒りを出来る限り溜めまくって、それを放つまでの丁寧なお膳立てである。このパートがあるからこそ、クライマックスが輝くのだ。もちろん、ただ胸糞悪いだけでなく、残酷描写や中途半端に爺さんに危害を加えられて挙動がほぼゾンビみたいになった人(演じるは川松尚良監督、迫真の演技!)なんかも盛り込んで、飽きさせないように配慮している。

やがて、欲張り爺さんの魔の手は、隣に住む正直爺さんたちにも伸びて、壮絶な展開を迎える。仏でもそんなに穏やかじゃないよってくらい何をされても怒らなかった正直爺さんは、あまりの仕打ちに打ちひしがれ、堪忍袋の緒が大ブチ切れし、遂に壮絶な復讐を決意するのだった。ここから本作は一気にギアを上げる。ご町内「悪魔のいけにえ」からリアリティラインを一気にぶち壊し、スーパー殺戮タイムへと突入するのだ!!

花咲か爺さんってこんな話だったっけ……と数分逡巡したのちに、多分こんな感じだったな……と納得する。そんな感じの映画に仕上がっている。個人的にお気に入りなのがラストシーンだ。グロテスクで、美しく、でも確かに花咲か爺さんで、あの世とこの世の境目が壊れたような儚さに満ちた映像を拝むことができる。これが、これが恐解釈なのか……と思わず感動してしまった。

いったいどんな映画になるのかと、正直観る前は戦々恐々としていたが、蓋を開けてみれば良質な残酷&胸糞ホラームービーに仕上がっていた。最近はプーさんとかも恐怖のアイコン化をしているし、その波に乗っかってドンドンいろんな童話をホラーすると良いと思う。日本からは、「鶴の恩返し」とか「笠地蔵」あたりはどうでしょうか。面白いのが出来上がりそうだ。血みどろの花咲かホラーを起点に色々と想像が膨らむ。恐解釈の可能性は無限だ!!

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(執筆者:人間食べ食べカエル)

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