「オッペンハイマー」、全米俳優組合のストライキ目前にUKプレミア敢行

Capital Pictures/amanaimages

米俳優組合（SAG-AFTRA）がストライキに突入する寸前の7月13日夕刻（現地時間）、英ロンドンの劇場街として知られるレスタースクエアで、全世界注目のクリストファー・ノーラン監督最新作「オッペンハイマー」のUKプレミアが敢行された。

米ハリウッド・レポーターによれば、ストライキ決行の可能性を踏まえ、レッドカーペットイベントの開始時間が1時間前倒しにされたのに加えて、マスコミにはイベントに出席したノーラン監督、キリアン・マーフィ、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・Jr.、エミリー・ブラントほか主要キャストへの取材を最小限に抑えること、SAG-AFTRAのストライキに言及することは一切避けること、という厳しい条件が課せられていたという。

先頭をきってレッドカーペットに登場した主演のマーフィは、「世界屈指の名監督と再び組めて夢のよう」とコメントした後、「ノーラン監督とは長い間タッグを組んできたから、実は今回も声をかけてもらえるんじゃないかって密かに期待していたんだ。でもそれはあくまで監督の判断によるものだから、自分から売り込むのはご法度。俳優としては、自分の仕事ぶりを見てくれていることを願うだけさ」と、照れくさそうに明かした。

アメリカ原子力委員会のルイス・ストラウス委員長役を演じるダウニー・Jr.は、詰めかけた大勢のファンからの大観衆に迎えられて颯爽と登場。「言えることはただひとつ。これは僕のキャリアの中で最高の映画だ」と胸を張って宣言すると同時に、「僕自身が見て育った往年のブロックバスターを彷彿とさせる、これぞ夏休みの大作映画！といった感じで、見る者の人生を変えてしまうかもしれない。それくらいインパクトのある作品なんだ」と太鼓判を押した。

マーフィ扮する主人公ロバート・オッペンハイマーの妻キティ役を演じるブラントは、大ヒットホラー「クワイエット・プレイス　破られた沈黙」で共演済みのマーフィとはすでに確固たる信頼関係を築いていたことから、今回もリラックスして夫婦役を演じることが出来たと語る。だが一方、米ニューメキシコ州の砂漠地帯での撮影ではリラックスどころか夜眠るのもままならないほど怖い思いをしたと明かす。「キャビンタイプのホテルに皆で滞在していたのだけど、周りには何もない荒野の真ん中、しかも真っ暗で灯りすらない。だからマットとジョシュ（・ハートネット）に、私を挟んだ両脇のキャビンに泊まってもらったの。『夜中に悲鳴を聞いたら、すぐに駆けつけて私を助けるのよ』ってね」。

レッドカーペット終了後、ひとりで舞台挨拶を行ったノーラン監督は、「素晴らしいキャスト陣」に改めて感謝を述べた後、「レッドカーペットで彼らの姿を目にしたばかりだと思いますが、残念ながらキャストは全員、米俳優組合のストライキ決行に伴い、プラカードを作りに各自の家に帰ってしまいました」とユーモアを交えてSAG-AFTRAのストライキ突入を報告するとともに、「私が所属する米脚本家組合（WGA）と一致団結のもと、公正な賃金を獲得すべく闘う意向です」と、俳優組合によるストライキへの全面的支持を表明した。