「映画ネメシス」に潜ませた、観たことのない新しい物語とは? 入江悠監督&北島直明プロデューサーが明かす手応え

2023年2月15日 19:00


映画でも抜群のコンビネーションを見せた(左から)櫻井翔、広瀬すず、江口洋介
映画でも抜群のコンビネーションを見せた(左から)櫻井翔、広瀬すず、江口洋介

広瀬すずが主演し、櫻井翔江口洋介と共演する“新時代の探偵物語”「ネメシス」が映画化され、3月31日から全国で封切られる。映画版の脚本を務めるのは、「アンフェア」シリーズなどミステリーの名手として知られる秦建日子氏。テレビシリーズでは総監督を務め、全10話のうち7話を監督した入江悠が劇場版でも引き続きメガホンをとり、秦氏が仕掛けた複雑なトリックの数々を映像に昇華してみせた。

映画.comは、2022年6月21日に横浜市内で行われた冒頭シーンの撮影現場に潜入。現場の様子をリポートするとともに、入江監督、北島直明プロデューサーのインタビューも織り交ぜながら紹介する。

一般的にテレビドラマが劇場版となる場合、海外ロケなどでスケールアップをはかることは定石だと言える。もしくはテレビシリーズに比べ、さらに強大な敵が主人公たちの前に立ちはだかるという構成も、“映画ならではの特別感を演出する”意味では考えられ得る選択肢だ。

画像2

「もちろんそういう作り方はあるし、実際に自分たちも当初は海外でロケをしたいなと思っていましたからね」と北島プロデューサーは語る。その言葉通り、当初は王道路線での映画化を画策していたようだが、「それよりも1本の映画として、しっかりと成立しているような作品にしたい」という思いから、軌道修正がはかられたという。

そうした製作陣の思いをくんだ“ミステリーの名手”秦氏による脚本は、夢と現実、日常と非日常が複雑に交錯し、いったい何が現実なのかを、終始、観客に問いかけるような作品となった。まさに一筋縄ではいかない脚本だったというが、入江監督は「秦さんからの挑戦状を受け取ったような気がして。モチベーションはガンと上がりました」と振り返る。

そんな本作を「今回はSFとミステリーが融合した感じになった」と語る入江監督は、「いわゆるクラシックな探偵物みたいなネタは、テレビドラマで結構やったんですが、今回の劇場版では、もう少しSF寄りというか、パラレルワールドみたいな話になっていて。例えば(『インセプション』で知られる)クリストファー・ノーランの映画なども、映画を観ればなるほどと思うんですけど、脚本を読んだだけでは分からないと思うんですよ。その感じに近いのかなと思いながらやっています」と解説する。

その言葉を補足するように、北島プロデューサーも「映画館という物語に集中して鑑賞する空間を想定しているからこそ、お客さんを信頼した作りにしています。いわゆる海外でロケをすることとは違う、映画だからこそ成立するもの、観たことのない新しい物語を作ることを目指しました」と語る。

画像3

この日、報道陣に披露されたのは、映画冒頭で繰り広げられるショッキングなシークエンス。暗闇の中、何者かにとらわれ、身動きがとれなくなっている栗田(江口)とアンナ(広瀬)。そこへ、ハサミを手にした風真(櫻井)がゆっくりと歩み寄り、アンナの父の形見であるネックレスを引きちぎる。普段の風真とはあきらかに違う、シリアスな空気感がただよっており、明らかに“異変”が起こっている。さらに風真は栗田のそばに立ち、手にしていたハサミをおもむろに栗田の首元に――。

目の前で起きていることは夢なのか、現実なのか。はたまたこれから起きる最悪の未来を予見した悪夢なのか――。まさに本作を象徴するような重要なシークエンスとなる。日の当たらない倉庫のセットには謎の数字がそこかしこに散見され、そして中央には“謎のトマト”が置物のように飾られている。普段、彼らが拠点としている探偵事務所のポップで雑然とした様子とは違い、どこか無機質で空虚な空間が広がる。

「現場では俳優たちとディスカッションをしながら、どの表現がいいのかを一緒に探りながらやっています」と語る通り、櫻井のもとに近寄った入江監督は、セットに入るタイミングや、ネックレスを引きちぎるタイミング、そしてハサミを手にするタイミングなどを入念に確認。寄り、引き、そして角度を変えたりと、細かくカットを割りながらも、ワンカットずつ、丁寧に撮影していった。

画像4

このカットについて「このシーン、風真が懐中時計を見るところがあるんですが、実は台本にはないんです。でも、あの懐中時計が後々伏線となって効いてくる。入江監督の演出の確かさですよね」と明かした北島プロデューサー。一方の入江監督も「今日のところは映画の肝になるところですが、見えてきたなという感じはありますね。“実は誰かが裏でこういう風に糸を引っ張っていた”というような仕掛けもあって。今日はそこがうまくいけばと思っていたんですが、どうやらうまくいきそうな感じ」と手応えを感じた様子。さらに「たぶん櫻井さんも最初に通しでやった時にホッとした感じだったんで、同じ手応えを感じていたんだと思います」と付け加えた。

映画だからこそできる表現を追求したと語る本作だが、北島プロデューサーは「テレビドラマを未視聴の方でも楽しめるように作ってありますが、一方で、テレビドラマを観てくれた人に対しても、しっかり楽しんでもらえるように作っています。ファンの皆さんが“待ってました”というような決めセリフや、やり取りも入っているし、キャラクターの関係性もちゃんと描いています」と語る。入江監督も「(広瀬、櫻井、江口の)お三方がすごいなと思ったのは、(テレビドラマの撮影から間があったのに)一瞬で戻ったということですね。それはやはりドラマをやってきたからこその関係性があるから。それこそテレビドラマをやってきたメリットだと思います」と3人のチームワークに満足げな様子だった。

映画ネメシス 黄金螺旋の謎」は、3月31日から全国で公開。

Amazonで今すぐ購入

フォトギャラリー

DVD・ブルーレイ

Powered by価格.com

関連ニュース

映画ニュースアクセスランキング

本日

  1. 「あぶない刑事」劇場版シリーズ初期3作、3夜連続で無料放送 舘ひろし&柴田恭兵がコメント発表

    1

    「あぶない刑事」劇場版シリーズ初期3作、3夜連続で無料放送 舘ひろし&柴田恭兵がコメント発表

    2024年5月20日 12:00
  2. 有村架純、8年ぶりの月9出演!「海のはじまり」でヒロイン役、目黒蓮とは「月の満ち欠け」以来2年ぶり共演

    2

    有村架純、8年ぶりの月9出演!「海のはじまり」でヒロイン役、目黒蓮とは「月の満ち欠け」以来2年ぶり共演

    2024年5月20日 05:00
  3. 【第77回カンヌ国際映画祭】奥山大史監督「ぼくのお日さま」にスタンディングオベーション、山中瑶子監督「ナミビアの砂漠」も好評価

    3

    【第77回カンヌ国際映画祭】奥山大史監督「ぼくのお日さま」にスタンディングオベーション、山中瑶子監督「ナミビアの砂漠」も好評価

    2024年5月20日 16:00
  4. 「ミッシング」が首位! 新作「碁盤斬り」「湖の女たち」「ボブ・マーリー」もトップ10内にアップ【映画.comアクセスランキング】

    4

    「ミッシング」が首位! 新作「碁盤斬り」「湖の女たち」「ボブ・マーリー」もトップ10内にアップ【映画.comアクセスランキング】

    2024年5月20日 14:00
  5. 「東京タワー」見逃し配信・総再生回数1000万回突破! 永瀬廉&松田元太も嬉しさ爆発「引き続きじゃんじゃん観て!」

    5

    「東京タワー」見逃し配信・総再生回数1000万回突破! 永瀬廉&松田元太も嬉しさ爆発「引き続きじゃんじゃん観て!」

    2024年5月20日 14:00

今週